苛性ソーダ工場を水素サプライチェーンに活用、日本初の実証開始:蓄電・発電機器
山口県周南市で苛性ソーダ工場の副生水素を活用した、水素サプライチェーンの構築実証が始まった。東芝の純水素燃料電池を2カ所の施設に導入し、施設や設備にCO2フリーの電力を供給する。
山口県周南市で純水素燃料電池を活用する実証実験が始まった。環境省が公募した「平成27年度地域連携・低炭素水素技術実証事業」の一環として行うもので、総合化学メーカーのトクヤマが運営する苛性ソーダ工場から発生する副生水素を、エネルギーとして有効利用する水素サプライチェーンの構築が目的だ。苛性ソーダ工場の副生水素を活用する実証は、全国初だという。
純水素燃料電池を導入したのは、市内にある地方卸売市場だ。東芝製の出力100kW(キロワット)の純水素燃料電池を導入した。純水素燃料電池は水素を直接用いて発電するため、CO2が発生しない他、発電までの時間が短いというメリットがある。地方卸売市場は副生水素を利用して発電した電力を、観賞用の花を保存する冷蔵庫などに供給する。さらに発電の過程で発生する温水は、市場内の空調や給湯に活用し、エネルギー効率を高める。
導入した純水素燃料電池(クリックで拡大) 出典:東芝
この実証では、地方卸売市場に加え、もう1カ所で副生水素と純水素燃料電池の活用を試みる。トクヤマが運営する「周南スイミングクラブ」だ。こちらにも東芝製の100kWの純水素燃料電池を導入し、プールの照明やポンプの動力など、施設で使用する電力の大部分を賄うという。発電過程で生じた温水は、シャワーの水を温めるボイラーの予熱として使用する。
「周南スイミングクラブ」と導入した純水素燃料電池 出典:東芝
苛性ソーダ工場で発生する副生水素は、液化もしくは圧縮水素として運搬している。純水素燃料電池を利用した発電の他、周南市や下関市内の水素ステーションに運搬し、燃料電池車や燃料電池フォークリフトなどにも利用する計画だ。
実証のイメージ図(クリックで拡大) 出典:環境省
風力で作る水素サプライチェーン実証、補助金に頼らない水素社会への第一歩に
神奈川県の京浜臨海地区で、低炭素な水素サプライチェーンの構築に向けた産学連携の実証事業が始まる。神奈川県、トヨタ、岩谷産業、東芝などが連携し、再生可能エネルギーを利用したCO2フリーな水素の製造と貯蔵、そして利用までを含んだ水素サプライチェーンを構築する。約4年かけて課題となるコストの部分やエネルギーのマネジメント、CO2削減効果などを検証する。
水素サプライチェーンを2020年に神戸へ、発電用に大量の水素を輸送・貯蔵
国を挙げて取り組む水素エネルギーの導入に向けて兵庫県の神戸市で実証事業が始まる。液化した水素を運搬・貯蔵する設備を瀬戸内海に浮かぶ空港島に建設して2020年に運転を開始する計画だ。石炭から水素ガスを精製する技術や海上輸送用のタンクも開発してサプライチェーンを構築する。
いちご栽培に水素を活用、工場の廃熱や廃液もエネルギー
愛媛県の西条市では8年前から水素エネルギーを農業に利用してきた。工場の排熱と地下水の温度差で水素を放出・吸収しながら、電力を使わずに冷水を製造していちごの栽培などに生かす。県内の沿岸部には風力発電と太陽光発電が広がり、製紙工場では廃液を利用したバイオマス発電が拡大中だ。
CO2フリーの水素を動物園や市場へ、農山村に小水力発電と竹バイオマス
未来のエネルギーとして期待が大きい水素の導入プロジェクトが山口県で動き出した。瀬戸内海に面した周南市では動物園や卸売市場に燃料電池を導入して、電力と温水の供給を開始した。農山村地域には小水力発電が広がり、大量に繁る竹を燃料に利用できるバイオマス発電所の建設も進む。
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