開発した新しい触媒プロセスにおいて室温で反応ガスを供給すると、直後から触媒層温度は急激に上昇し、20秒以内とごく短時間で522℃に達したという。それとほぼ同時に水素と窒素の生成がスタートし、15〜20秒で水素の生成速度は1gの触媒で1時間当たり14L(リットル)に達した。
酸化分解は発熱反応のため、一旦反応がはじまると触媒層の温度は高温に保たれる。このため、アンモニアが反応中に脱離して安定して吸着できる吸着サイトが再生される。これに不活性ガスを流しておくことで、2回目以降は吸着サイトを再生するための前処理を行わなくても、反応ガスを供給するだけで、繰り返し反応を起動できるという。
実際に反応ガスの供給、排出のサイクルを繰り返してみたところ、前処理が必要なのは1回目の起動前だけで、その後は前処理をしなくても室温で反応ガスを供給するだけで、水素を繰り返し発生できることが確認できた。
研究グループは今回の成果を利用することで、外部加熱なしに常温で起動し、瞬時に水素を製造できるる小型の水素製造装置の実現が期待できるとしている。また、この触媒プロセスは燃料電池や水素エンジンなどの起動や停止を頻繁に行う装置に対しても有効である可能性が高く、エネルギーキャリアとしてのアンモニアの普及に貢献することができるとした。
なお、この研究成果はアメリカ科学振興協会発行の学術雑誌「Science Advance」のオンライン版に2017年4月29日に掲載された。
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水素をもっと簡単に生成、低温で可能な新しい触媒反応Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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