三菱電機、「世界初」発電機の大規模解析技術を開発エネルギー管理

三菱電機は、タービン発電機の全体の運転状況を詳細に把握できる大規模解析技術を開発したと発表した。発電機の高効率化と信頼性向上を実現し、電力の安定供給に貢献するという。

» 2017年05月29日 13時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

世界最大規模となる3000万メッシュの電磁界解析

 三菱電機は2017年5月、タービン発電機の全体の運転状況を詳細に把握できる大規模解析技術を開発したと発表した。世界最大規模となる3000万メッシュの電磁界解析や熱流体解析、構造解析との連携により、発電機の損失低減・冷却効率向上による高効率化と信頼性向上を実現し、電力の安定供給に貢献することを目指すという。

 同社によると、発電機市場は環境負荷低減のため、高効率な火力発電機の需要拡大が予測される一方、不安定な再生可能エネルギーを補うため、さらなる信頼性の高い多様な発電が求められている。従来は高効率と高信頼性を実現するために、発電機全体の電磁界解析、熱流体解析、構造解析を行っていたが、発電機の部品サイズは最大数メートルと大きい。効率や信頼性に影響が大きい固定子は形状が複雑で部品点も多いため、電磁損失の現状や温度分布、変形の予測を詳細に把握することは困難だった。

 三菱電機はタービン発電機の電磁界解析で、独自のメッシュ分割と18倍の計算速度を実現する領域分割法を採用した大規模解析技術を開発。3000万メッシュでの電磁界解析により、電磁損失を詳細に把握できるとする。電磁界解析と熱流体解析、構造解析を連携させることで、実環境のため計測できない部分や、実機では評価できない過酷な運転条件についても、温度分布や変形を予測することが可能となっている。

開発した技術のイメージ 出典:三菱電機

 今回の技術では従来の700万メッシュから、独自のメッシュ分割と領域分割法により3000万メッシュの大規模解析を実現した。コイルを形成する約100本の銅線1本ごとの損失を高精度に評価する。従来の部品単位での解析に対し、効率に影響が大きい固定子の端部構造を丸ごと解析することで電磁損失分布も正確に評価する。

 また電磁界解析で得られた電磁損失分布を、数億ある熱流体の要素にマッピングし、温度分布を高精度に予測。全ての電磁力解析結果を用いた構造解析により、センサーを設置できない部品も含めた全部品の振動挙動を忠実に模擬することも可能という。

 同社では今回の技術を、現在の高効率タービン発電機「VP-X シリーズ」や次期開発機種の解析に順次展開し、2020年頃に発電機全体での連携解析実現を目指すとした。

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