「原発停止で落ちた自己資本比率を20%に」 九電が経営計画を発表電力供給(1/2 ページ)

九州電力グループは、2021年度までの財務目標を発表した。自己資本比率を20%程度に回復させること、平均の経常利益を1100億円以上、成長事業への累計投資額4200億円を目指すという。

» 2017年06月07日 09時00分 公開
[庄司智昭スマートジャパン]

「毀損(きそん)した財務基盤の回復が急務」

 2030年のありたい姿、それは「日本一のエネルギーサービス」を提供すること――。2016年4月の電力小売自由化、2017年4月にはガス小売全面自由化が始まるなど、エネルギー事業を取り巻く環境は変化をし続けている。九州電力グループ(九電)は、経営姿勢をさらに明確にし、経営革新への取り組みを加速させる必要があると考えた。

 そこで2017年6月、2021年度までの財務目標と2017年度の経営計画を発表した。財務目標の1つ目に強調したのは、自己資本比率を20%程度まで回復させることだ。2011年3月の東日本大震災に伴う、玄海原子力発電所(原発)と川内原発の長期停止により、2010年度に25.4%だった自己資本比率は、2014年度に9.0%と2桁を割った。

 2015年度に10.1%、2016年度には12.0%まで回復したが、九電は「競争環境が激化する中で安定的に経営を行うためには、毀損(きそん)した財務基盤の回復が急務である。このことから目標とする自己資本比率を2021年度末に20%程度とした」と語る。

自己資本比率の推移 (クリックで拡大) 出典:九州電力

 他にも2017〜2021年度平均の経常利益を1100億円以上、海外電気事業や再生可能エネルギー事業をはじめとする成長事業への累計投資4200億円を目指すという。なお2016年度の経常利益は940億円、2012〜2016年度累計の成長投資は2880億円である。

原発の安全性・信頼性向上に向けた取り組み

 目標達成の取り組みとして、九電は「九州内のエネルギーサービス事業」「成長分野における事業」「強固な事業基盤」の3つを掲げた。その一部を紹介する。

 エネルギーサービス事業の1つに挙げたのは、原発の安全性・信頼性向上に向けた取り組みだ。九電は「福島第一原発のような事故を決して起こさない固い決意で、新規制基準を踏まえて、原子力の安全確保に万全を期すための対策を実施している」と語る。

 新規制基準は自然災害に対する設計基準が強化されたため、火山活動の定期的なモニタリングや、竜巻から重要な設備を守る対策を実施。具体的には、発電所から半径160kmの範囲にある火山と九州のカルデラを調査した。火山活動をモニタリングし、定期的に評価を行っている。また日本で発生した最大の竜巻(92m/秒)を踏まえ、最大100m/秒の竜巻を想定した資材保管用コンテナの固縛や保管庫の設置なども行ったとする。

重大事故の発生に備えた対策も強化 (クリックで拡大) 出典:九州電力

 これらの対策により、川内原子力発電所は新規制基準に合格して、1号機は2017年1月、2号機は同年3月に通常運転に復帰した。鹿児島県知事からの要請による熊本地震を受けた特別点検においても、1・2号機とも異常は確認されなかったという。玄海原子力発電所3・4号機に関しても、早期の再稼働に向けた取り組みが進められている。

 エネルギーサービス事業では他に、ガス小売事業への本格参入やオール電化の促進、燃料調達力の強化、情報通信サービス・生活サービス事業への展開などを挙げた。

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