太陽電池の効率向上へ、量子ドットの発光を自在に制御太陽光(1/2 ページ)

東北大学の蟹江澄志氏らによる研究グループは、自己集積した硫化カドミウム(CdS)量子ドットのナノ組織構造制御により、蛍光発光強度を自在で可逆的に制御できることを初めて見いだした。太陽電池の効率向上やLEDの高輝度化につながる可能性がある成果だという。

» 2017年06月13日 07時00分 公開
[庄司智昭スマートジャパン]

光エネルギーを直接電気に変換できる可能性

 東北大学 多元物質科学研究所の蟹江澄志氏らによる研究グループは2017年6月、自己集積した硫化カドミウム(CdS)量子ドット*)のナノ組織構造制御により、蛍光発光強度を自在で可逆的に制御できることを「初めて見いだした」と発表した。

*)CdS量子ドット:硫黄とカドミウムからなる半導体無機材料で、ナノサイズの半導体ナノ粒子は特に「量子ドット」と呼ばれている。化学的に安定であり、外部からの紫外線照射により発光する特性を有している。量子サイズ効果と呼ばれる、量子ドットのサイズに応じて、発光波長が異なる性質を示すという。

 このようなエネルギー遷移機構は、光のエネルギーを直接電気エネルギーに変換できる可能性があり、太陽電池の効率向上やLEDの高輝度化につながることが期待される。

図1:球状に自己集合する液晶性デンドロンをCdS量子ドット表面に密に修飾することで得られる「有機無機ハイブリッドデンドリマー」概略図 (クリックで拡大) 出典:東北大学

 ナノサイズ微粒子からの三次元的な規則配列の形成は、個々のナノ粒子の特性だけでなく、ナノ粒子間の相互作用によって規則配列構造に由来した新しい機能が発現する可能性があることから、活発な研究開発が行われている。

 蛍光性半導体ナノ粒子は、電子を微小な空間に閉じ込めることから、量子ドットとも呼ばれている。量子ドットは外部からの紫外線照射により、量子ドット内部の電子が光エネルギーを受け取り、エネルギー準位の高い状態に励起され、励起した電子が元の状態に戻る際に発光(フォトルミネッセンス)する。フォトルミネッセンスする量子ドットを三次元規則配列させることができれば、その発光強度を強めたり、発光エネルギーを他のエネルギーに変換したりすることが可能と考えられているという。

 蟹江氏らの研究グループはCdS量子ドット表面に、温度変化で液晶状態となるデンドロンを密に修飾することで、CdS量子ドットにデンドロン由来の液晶性を付与。これにより、CdS量子ドットを自己集積的に三次元規則配列させることに成功した(図1)。

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