奈良県天理市で、太陽光発電事業と稲作を同時に行うソーラーシェアリングが開始する。追尾式のシステムを採用することにより、発電量の増加と太陽光パネル下部のトラクター作業を達成できた。
再生可能エネルギーを利用した発電機械器具の開発・製造などを行うエグテック(奈良県天理市)は、「太陽光発電×水田設置」を同時に行うソーラーシェアリング(営農型発電)事業を開始したと発表した。
今回、天理市の1反(約1000平方メートル)の水田3カ所に、エナテクス社の出力49.9kWの2軸追尾式太陽光発電システム「エナトラッキングシステム」を設置した。エナトラッキングシステムは、高精度の光センサーで日の出とともに東を向き、パネル面が一日中太陽の正面になるよう追尾する。従来の固定式に比べ1.3〜1.5倍の発電量が得られるという。台風が多い日本の気候に適合する耐久設計や、Web監視システムの採用により、発電量をモバイル端末からチェックできるなどの特徴がある。
このシステム導入に合わせて、2017年6月に田植えを行い、同年10月には稲を収穫した。周囲の水田にも影響はなく、パネルの下で稲を生育させることに成功。また、太陽光パネルを地面と水平にする「水平モード」を利用することで、十分なパネル下部の空間確保し、トラクターを利用した農作業も問題なかったとしている。
同社では作物に必要な太陽光を確保し、残りを太陽光発電に回すソーラーシェアリングをすれば、農業と売電の両立が可能になるという。今回のモデルケースでは稲作をしながら全量売電した場合、電力の買い取り単価は27円/kWhで、初期投資を約10年で回収できると試算する。
農家の仕事は重労働でありながら収入が少ないことが多く、就労者の減少が問題にとなっている。また、米の売価は比較的安く、農機具や肥料の購入費をまかなえずに赤字になる農家も多い状況だという。
そこで、エグテックでは、現在農業を行っている畑や田んぼなどの農地に太陽光発電システム用の支柱を立て、ソーラーシェアリングを行うことで、これまで通り作物を育てながら発電による収入も得ることや、その収入で農業を外注することも可能になるとし、さまざまな農業問題の解決手法の1つになると期待を寄せている。
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