熱源に貼るだけで発電、曲がる熱電モジュール:蓄電・発電(2/2 ページ)
本研究のポイントは、
- 熱電材料であるn型ビスマス・テルル材に遷移金属をドーピングすると、熱電材料の性能を示すゼーベック係数の増大を確認したこと
- 遷移金属をドーピングしたn型ビスマス・テルル材のインゴットを、緻密で均質な焼結体を量産加工できる熱間等方加圧法によって大量生産する技術を確立したこと
の2点となる。
このn型ビスマス・テルル材と、p型ビスマス・テルル材のインゴットをウエハー形状にスライスし、その上に電極を形成することで、ビスマス・テルル材のチップを作製した。これらのチップをフレキシブル基板上に高密度に実装し、260対のpn素子からなるフレキシブル熱電モジュールを開発した
フレキシブル熱電モジュールの平面(左)と断面(右)の模式図 出典:産業技術総合研究所
このモジュールについて、産総研が開発した評価装置により性能試験を実施。真空中で低温側温度を30℃、高温側を100℃まで加熱して、最大70℃の温度差での発電性能を測定した。温度差が増加するにつれて発電出力も増加し、70℃のときの開放起電力は約5.3V、内部直流抵抗は2.7Ω、最大発電出力密度は87mW/cm2となった。
フレキシブル熱電モジュール評価装置(左)と高温側の加熱温度に対する発電出力の依存性(右) 出典:産業技術総合研究所
さらに、曲げ半径50mmで1000回の曲げを繰り返した曲げ試験でも、発電出力の変化は1%以下と、曲げによる劣化がほぼ無く安定した発電性能を示すことが実証されたとする。
発電出力と曲げ回数との関係 出典:産業技術総合研究所
今後、産総研らは今回開発したフレキシブル熱電モジュールの長期信頼性の実証、熱電材料の性能向上などの共同開発をさらに進めるとし、本モジュールに電源回路や放熱機構を統合した熱電発電システムの開発を進めて製品化を目指すという。
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