単結晶太陽電池のコスト大幅減に光、東工大らが薄膜作製技術を開発太陽光

東京工業大学と早稲田大学は、高品質な単結晶シリコン薄膜を従来手法の10倍以上となる成長速度で作製することに成功した。同技術により、単結晶バルク型太陽電池の発電効率を維持したまま、製造コストを大幅に低減した薄膜型太陽電池の製造が可能となる。

» 2018年03月15日 07時00分 公開
[松本貴志スマートジャパン]

ウエハーの表面粗さを制御することで高品質な薄膜作製が可能に

 東京工業大学(東工大)は早稲田大学(早大)と共同で、結晶欠陥密度をウエハーレベルまで低減した高品質な単結晶シリコン薄膜を、従来手法の10倍以上となる成長速度で作製することに成功したと発表した。同技術では原料収率も100%近くとなるため、単結晶バルク型太陽電池の発電効率を維持したまま、製造コストを大幅に低減した薄膜型太陽電池の製造が可能となる。

 単結晶太陽電池は薄型化することにより、単結晶バルク型太陽電池モジュールの約40%を占める原料コストを大幅に低減できると見込まれており、さらにフレキシブル化、軽量化による用途の拡大、設置コストの低減も期待されている。

 また、多数の細孔を持つナノ構造のポーラスシリコンで単結晶シリコン薄膜をリフトオフ(剥離)し製造する単結晶薄膜太陽電池は、有望な次世代太陽電池として注目されている。しかし、高品質な薄膜の形成、容易にリフトオフ可能なポーラス構造の実現、成長速度と原料収率の向上、リフトオフ後の基板を再利用できるようにすることなど、複数の技術的な課題があった。

本技術における薄膜作製の流れ(クリックで拡大) 出典:東京工業大学

 同技術では、単結晶シリコンウエハー表面にポーラスシリコンを2層生成し、東工大独自の平滑化技術であるゾーンヒーティング再結晶化法(ZHR法)によって表面をならすことで、高品質な薄膜形成と薄膜の容易なリフトオフを両立する基板を作製した。

 この基板上へ薄膜を高速成長させるため、早大が開発した急速蒸着法(RVD法)を活用した。従来手法である化学蒸着(CVD)の製膜速度は最大で毎時数マイクロメートルオーダー、原料収率は10%程度だったところ、RVD法では毎分10マイクロメートルの速度で製膜が可能になった。また、リフトオフ後の基板もRVDの蒸発源として利用できるため、原料損失を大幅に低減できることもメリットだ。

基板表面粗さが結晶欠陥に影響を与えるイメージ 出典:東京工業大学

 今後、太陽電池の性能に関わるパラメーターの1つである薄膜のキャリアライフタイムの測定を行うことや、実際に薄膜から太陽電池を作製して同技術の実用化を目指すという。また、30%超の発電効率が期待され複数のpn接合を持つ構造の、タンデム型太陽電池の低コストなボトムセルとしての利用も検討するとしている。

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