100倍の速さで充放電する新型電池、2020年度に量産へ蓄電・発電機器

凸版印刷が二次電池事業に本格的に参入。東京大学発ベンチャーと共同で、従来電池の100倍の充放電速度を実現する新型電池を開発し、2020年度に量産を開始する計画だ。

» 2018年03月16日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 凸版印刷は2018年3月14日、次世代二次電池事業に本格的に参入すると発表した。「エクセルギー電池」の開発・製造を手がけるエクセルギー・パワー・システムズ(東京都文京区、以下エクセルギー)と同年2月9日に資本業務提携を締結しており、約5億円を出資とエクセルギー電池事業の共同推進に合意。エクセルギー電池は急速な充放電を行えるのが大きな特徴の電池で、2020年度の量産化を目指すとしている。

 出資先のエクセルギーは、2011年設立の東京大学発のベンチャー企業。水素を利用した蓄電池や燃料電池の製造開発を手掛けている。凸版印刷はエクセルギー設立当時から、エクセルギー電池の共同開発や事業化に向けた実証を進めてきた。このほど、連続的に急速充放電が可能で、耐久性の高い二次電池の開発にめどが立ったため、資本提携と事業化を共同で進めていくことに合意したという。

 両社が開発するエクセルギー電池は、電池内部で発生した熱を急速に放熱し、温度の上昇温度を5度以内に抑える独自構造を持つ。これにより、一般的な二次電池の100倍となる200C以上の連続的な急速充放電を可能にしたという。ここでいうCとは、充放電レートの単位で、1Cは60分で満充放電できる電流値を指す。今回開発した電池は、60分/200C=18秒で完全な充放電が可能としている。

「エクセルギー電池」のイメージ 出典:エクセルギー・パワー・システムズ

 高い耐久性も特徴とする。電池内部に水素を封入することで、酸化による電極の劣化を抑えられるようにした。これにより、ハイレート時の連続50C充放電で15万回以上のサイクル寿命を実現したとする。これは一般的な二次電池の10倍に相当するという。構成材料にリチウムや有機溶剤を使用しないため、二次電池の安全性試験におけるクギ刺し試験も不要だ。

 これらの特徴を持つエクセルギー電池は、従来常用電源からの電力供給が必要だった医療機器や、高い出力の回生電力の充電を活用した重機などに向くとしている。また、電池の起電圧を充電電圧で設定できるため、制御装置がない状態でも過充電することなくフローティング充電が行える。そのため、バックアップなどの無停電電源装置にも適用可能としている。

 凸版印刷はこのエクセルギー電池の開発に向け、同社の材料設計ノウハウとコーティング技術を生かして開発した電極を提供している。具体的には印刷技術を応用し、ニッケル系基材を独自開発の導電性インキをコーティングした電極を開発した。

 両社は、2018年4月からエクセルギー電池のサンプル出荷を開始し、2020年度から量産する予定だ。2025年にはエクセルギー電池事業で、約100億円の売り上げを目指すとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.