地域に根差してソーラーシェアリングに取り組む、各地の事業者も登壇した。福島県で活動する飯舘電力の近藤恵氏(専務取締役)は、ソーラーシェアリングによって地域が再生しつつあるとして、次のように語る。
「震災でしばらく農業ができなくなりましたが、再生可能エネルギーによって復興の足掛かりを得ることができました。私たちの発電所は50kW(キロワット)以下の小規模なものばかりですが、現在35カ所の太陽光発電所があり、そのうちの13カ所がソーラーシェアリングという状況です。計画中のものも26カ所あり、うち8カ所がソーラーシェアリングとなります。被災地は過疎化が30年早く進んだといわれていますが、私たちはソーラーシェアリングを進めていていくことで、過疎からの回復を図りたいと考えています。飯舘電力は村民46人が資金を出し合い、多くの方々の寄付もあって設立された会社です。株式会社ではありますが、公共的な役割も担っていこうという使命で頑張っています」
兵庫県の宝塚すみれ発電では、太陽光パネルの下を市民農園として貸し出している。同社の代表取締役を務める井上保子氏は、「はじめは誰が借りてくれるかと思ったけれど、どんどん輪が拡がって……。一般の方はもちろん、地元企業や大学、市民団体など、いろいろと人達がワイワイしながらやっています」と、にこやかに話す。
さらに井上氏は、ソーラーシェアリング導入の意義を次のようにまとめる。
2018年からは、コープこうべと連携して、「私たちの電気を欲しいといってくれる方に届けることができるようになった」ともいう。地域をどんどん巻き込んで、人々に喜ばれながら発展を続けるソーラーシェアリングの一例だ。
ソーラーシェアリングの生みの親である、最高顧問・長島彬氏は言う。「私がソーラーシェアリングの着想を得たのは、今から15年ほど前。それから10年たった2013年、ようやく農林水産省もこれを認め、ソーラーシェアリングは普及の途につきました」。このほど同省が積極的な促進策を打ち出したことには、感慨ひとしおの様子だ。
長島氏は、今後、ソーラーシェアリングの技術をより幅広く活用することを提案していきたいと考えている。「例えば今のメガソーラーは自然を破壊するものになっていますが、ソーラーシェアリングの技術を応用すれば、自然と共生するメガソーラーを作ることも可能です。また、熱帯諸国の飢餓と貧困対策にも、ソーラーシェアリングは役立ちます。熱帯の問題は、強過ぎる太陽が大きな要因です。しかしソーラーシェアリングの技術で、それを緩和することによって、アフリカ諸国も飢餓と貧困から脱却できるのです」。ソーラーシェアリングの可能性は、どこまでも拡がっているようだ。
シンポジウムには、定員を超える200人以上の参加者が全国各地から駆け付けた。引き続き行われた交流会も大いに盛り上がり、祝祭ムードのうちに幕を閉じた。ソーラーシェアリングのますますの発展を予感させる一日だった。
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