東京工業大学らの研究グループは、出力を高めた全固リチウムイオン体電池で、超高速充放電に成功。次世代電池として期待される全固体リチウムイオン電池の実用化に寄与する成果だという。
東京工業大学の研究グループは2018年8月、東北大学、日本工業大学と共同で、高出力型全固体電池で極めて低い界面抵抗を実現し、超高速充放電の実証に成功したと発表した。「全固体リチウム電池の実用化の鍵であり、実用化を目指す上で大きな一歩」という。
固体の電解質を用いる全固体電池は、高いエネルギー密度と安全性を兼ね備えた電池として、早期の実用化が期待されている。その電極材料として、現在広く利用されている発生電圧4V程度の「LiCoO2」系より、5V程度のより高い電圧を発生する電極材料「Li(Ni0.5Mn1.5)O4」を用いた高出力型全固体電池が注目されており、研究が活発化している。
しかしLi(Ni0.5Mn1.5)O4用いた高出力型全固体電池は、固体電解質と電極が形成する界面における抵抗(界面抵抗)が高く、リチウムイオンの移動が制限されてしまうため、高速での充放電が難しかった。
高速充放電が実現すれば、携帯電話やパソコンが数分で充電完了する可能性が出てくる。そのため、高出力型全 固体電池における界面抵抗の低減、さらには高速充放電の実証は、喫緊の課題となっていた。
同研究グループでは、今回、薄膜作製技術と超高真空プロセスを活用し、Li(Ni0.5Mn1.5)O4エピタキシャル薄膜を用いた全固体電池を作製した。
そして固体電解質と電極の界面におけるイオン伝導性を評価した結果、界面抵抗が7.6Ωcm2という低い値となることを見出した。これは、従来の全固体電池での報告より2桁程度低く、液体電解質を用いた場合と比較しても1桁程度低い値となる。さらに、活性化エネルギーを見積もったところ、超イオン伝導体と同程度の低い値(0.3eV程度)を示すことがわかった。
今回、このような低抵抗界面の安定性を探るため、大電流で充放電試験を行い、14mA/cm2という大電流でも安定して高速充放電することに成功した。100回の超高速充放電では、電池容量の変化は全く見られず、リチウムイオンの高速な移動に対して、固体電解質と電極の界面が安定であることを実証した。
また、全固体電池の構造解析を行った結果、固体電解質と電極の界面を形成した直後に、固体電解質から電極へ、リチウムイオンが自発的に移動することも明らかになった。
今回の成果により、従来の4V程度の発生電圧から5Vへ、全固体電池を高出力化する道筋が見えてきたという。また、今後の詳細な界面構造の解析により、さらなる電池特性の向上につながる界面設計指針の構築が期待されるとしている。
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