調査会社の富士経済が「2018年版 業務施設エネルギー消費実態調査」を公表。施設ストック数やエネルギー消費量が多い業務施設7分野50業種のエネルギー消費特性を明らかにした。
調査会社の富士経済は、業務施設のエネルギー消費実態を調査した。その結果を「2018年版 業務施設エネルギー消費実態調査」にまとめ、施設ストック数やエネルギー消費量が多い業務施設7分野50業種のエネルギー消費特性を明らかにした。
施設別で、年間の総エネルギー消費量と1施設当たりのエネルギー消費量(平均)のランキングトップ10をみると、1施設当たりのエネルギー消費量は大きくないものの、施設ストック数が多いことから、事務所・オフィスビル、旅館、食品スーパー、コンビニエンスストア、理・美容院などが入った。また、1施設当たりのエネルギー消費量が多いデータセンター、シティホテル、病院、スーパー銭湯などもランクインしている。
総エネルギー消費量ランキングトップの事務所・オフィスビルは、1施設当たりのエネルギー消費量は1171GJ(ギガジュール)であるが、施設ストック数が73万1300件と群を抜いて多い。施設規模としては、延床面積500平方メートル未満と1万平方メートル以上が増加しており、二極化が進んでいる。
1施設当たりのエネルギー消費の内訳は、空調が44%と最も多く、次にPC(サーバー含む)、複合機やプリンターなどコンセントを経由した消費が24%、照明が20%である。空調や照明では小規模施設でも高効率空調やLED照明の導入などにより省エネ化が進んでおり、エネルギー消費量の低減が進んでいくとみられる。
1施設当たりのエネルギー消費量ランキングトップのデータセンターは、クラウドサービス需要の拡大に伴って施設の大型化が進んでおり、延床面積2500平方メートル以上の施設の新設が相次いでいる。
1施設当たりのエネルギー消費の内訳は、サーバーなどのICT機器、UPS、配電機器などが合わせて60%近くを占める。ICT機器の省エネ性能は向上しているものの、施設の大型化によってエネルギー消費は増加しているという。
データセンターではICT機器の正常な運用のため24時間365日温度・湿度が一定に保たれていることから、空調の比率も高くエネルギー消費の36%を占める。大規模なデータセンターでは、消費電力が低く1台当たりの冷凍能力が高いターボ冷凍機の採用が多くみられる。
電力契約別の施設ストック数ランキングでは、上位から事務所・オフィスビル、理・美容院、居酒屋、診療所、歯科診療所、コンビニエンスストアの順となった。そのなかで、事務所・オフィスビル、居酒屋、コンビニエンスストアは高圧・特別高圧契約、低圧契約どちらの施設数も多い。一方、理・美容院、診療所、歯科診療所は低圧契約の施設数が圧倒的に多い。
こうした施設向けに、電力小売の全面自由化に際して小売電力事業者は、高圧施設への提案を継続しつつ、低圧で電力消費量が多い業界を対象とした業界特化型の電力メニューを打ち出し低圧業務施設の需要家獲得に動いている。
業界特化型プランは、小売電気事業者が各業界でつながりの深い企業と提携することで需要家へ提案されている。取引先企業からの業界特化型プランの提案による電力契約切り替えで経費節減につながることが認知されつつあり、今後も多業種で行われていくとみられる。
現在、業界特化型プランは、パン屋、歯科診療所、動物病院、飲食店、理・美容院、保育園向けなど、低圧契約の施設ストック数が多い業種を中心に展開されている。
また、ガス小売の全面自由化に際しては、小口の法人をターゲットとした提案がなされている。以前は、都市ガスは電力よりも調達のハードルが高く、提案ノウハウの蓄積が求められることから参入事業者は限られていた。しかし、既に参入する東京電力エナジーパートナーと日本瓦斯が新たに設立した東京エナジーアライアンスがガスの卸供給や顧客管理システムなどさまざまな機能をパッケージ化し提供し始めたことで、同社のプラットフォームを活用して新たに参入する事業者が増えている。
さらに、電力と合わせてガスを提案するケースが多いことから、電力と同様にガス多消費業界へは、業界と接点を持つ事業者との連携による業界特化型プランの展開が注目されるとしている。
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