2030年度の太陽光普及率は9.7%、“卒FIT”の割合は47%に太陽光

調査会社の富士経済が住宅太陽光発電やオール電化住宅に関する調査結果を発表。2030年度の住宅分野における太陽光普及率は9.7%で、“卒FIT”を迎える住宅の割合は47%にのぼると予測した。

» 2018年11月20日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 調査会社の富士経済は、住宅太陽光発電やオール電化住宅などの普及に関する調査を実施し、「2018年版住宅エネルギー・サービス・関連機器エリア別普及予測調査」にまとめた。

 太陽光発電システムを設置している住宅数(ストック住宅)は2018年度に322万戸、普及率は6.0%が見込まれる。単年度での導入数は2012年度に開始したFITの全量買い取り制度の特需が落ち着いた2014年度以降前年割れが続いたが、2018年度以降は毎年度18万個程度の導入と、横ばいが予想される。なお、ストック住宅は増加を続け2030年度に520万戸、普及率は9.7%と予測している。

 2009年度に開始されたFITによる住宅太陽光発電の余剰電力買取制度の期間は10年間であり、制度開始年度に対象となった住宅は、2019年度に終了する。買い取りが終了する“卒FIT住宅”は2019年度に56万戸が予測され、太陽光発電システムを設置する住宅の16%に相当する。2009年度の対象には制度開始以前より太陽光発電システムを設置する住宅も含まれるため、一時的に卒FIT住宅が多くなるが、2020年度以降は毎年度20〜30万戸、2025年度以降は毎年度15〜20万戸程度とみられ、2030年度の卒FITのストック住宅は242万戸、太陽光発電システムを設置する住宅の47%と予測される。

太陽光発電の設置住宅数と卒FIT住宅の推移予測 出典:富士経済

 固定価格での買い取りが終了すると、ユーザーは売電によるメリットが少なくなることから、卒FITを契機として売電から自家消費への転換が進み、自家消費機器として住宅用蓄電池や太陽光発電と連携するエコキュートなどの活用が想定される。太陽電池パネルの耐用年数は20年以上である一方、パワーコンディショナーは10〜15年といわれており、パワーコンディショナーの交換時に住宅用蓄電池の設置を提案するケースも増えている。この他にも、新電力が電力小売りと余剰電力買い取りのセット提案を行うなど、卒FIT住宅の余剰電力の利活用をめぐる営業活動が活発化してきた。

 オール電化住宅数は東日本大震災以降前年割れが続き、2016年度は新築・既築合わせて29.1万戸まで落ち込んだ。しかし、西日本エリアを中心とする原子力発電所の再稼働や電力小売全面自由化を契機に、既存電力会社によるPR活動やサブユーザー向けの営業支援などが活発化し、2017年度は前年度を上回った。

 2018年度は翌年に迫る消費税増税前の駆け込み需要などもあり新築・既築共に増加し、31.6万戸が見込まれる。しかし、2020年度以降は駆け込み需要の反動減や人口・世帯数の減少などから、戸建住宅を中心に新築着工住宅数の減少が加速し、新築のオール電化住宅数は再び前年割れが予想される。一方、既築のオール電化住宅数は、既存電力会社による営業強化に加え、卒FIT住宅の余剰電力の活用先としてエコキュートが注目されていることや、太陽光発電システムの価格下落により訪問販売事業者などがオール電化の提案に回帰していることなどから、今後も増加が予想される。

 2030年度には新築向け14.5万戸、既築向け12.0万戸、合わせて26.5万戸が予測され、既築向けの比率が45%まで高まるとみられる。なお、これまでオール電化住宅普及の目的は既存電力会社が一般家庭の夜間電力需要の確保などのため進めてきたが、2016年4月の電力小売全面自由化以降、その位置づけは変化している。

太陽光発電の設置住宅数と卒FIT住宅の推移予測 出典:富士経済

 新電力は原子力発電所を保有していないことから夜間料金が割安となるオール電化料金プランに対抗できるプランを提示できる事業者が少なく、既存電力会社は顧客の囲い込み策の一つとしてオール電化の積極的な展開を進めている。また、2017年4月のガス小売全面自由化を受けて、都市ガス小売に参入する既存電力会社も増えており、LPGエリアではオール電化住宅、都市ガスエリアでは電気と都市ガスのセット販売を基本に展開を強化している。

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