東京電力とイーレックスが再エネ販売で新会社、“大手と新電力”の提携が加速する背景とは電力供給サービス(1/2 ページ)

電力自由化による市場環境の激化で、大手電力と新電力の提携が加速している。東京電力と“老舗新電力”のイーレックスが特別高圧・高圧向け小売事業を行う新会社を設立すると発表。「RE100」加盟企業などに向けて、再生可能エネルギー由来100%の電力プランも展開する。

» 2019年03月19日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 2016年4月にスタートした電力市場の完全自由化から間もなく4年を向かえるなか、従来は“商売敵”とされていた大手電力会社(旧一般電気事業者)と新電力がタッグを組むケースが増加している。

 2000年に始まった特別高圧市場の自由化から小売電気事業を展開してきた“老舗新電力”のイーレックスと、東京電力エナジーパートナーは2019年3月18日、同月29日付けで小売電気事業を手掛ける新会社を共同出資で設立すると発表。新会社の名称は「エバーグリーン・マーケティング株式会社」で、資本金は1520万円、出資比率はイーレックスが66%、東電EP側が34%。特別高圧および高圧向けの需要家を対象に、2019年4月から全国で営業を開始する。価格競争が激化する高圧向けでの競争力強化や、再生可能エネルギー由来電力の需要増を見越した提携だ。

3月18日に開いた記者会見の様子。左からイーレックス 代表取締役社長の本名均氏、エバーグリーン・マーケティング 代表取締役社長を務める田中稔道氏、東京電力エナジーパートナーの取締役副社長 大亀薫氏

価格競争が激しい高圧領域を

 エバーグリーン・マーケティングが展開する事業は大きく2つ。1つが特別高圧および高圧向けの需要家に対し、電力コスト削減つながる省エネルギー提案サービスの提案だ。イーレックスの持つ全国1500社を超える販売代理店網などの営業ネットワークと、東電EPの持つ高圧需要家に対する提案のノウハウを組み合わせ、価格競争が激化している高圧向けで競争力を高める狙いがある。特にイーレックスは九州エリアに強みを持ち、東電EPにとってはエリア開拓の足掛かりになる。

 既に東電EPグループでは、高圧需要家向けの販売を担う子会社のテプコカスタマーサービス(TCS)がある。こちらとのすみ分けについて、東京電力エナジーパートナーの取締役副社長である大亀薫氏は「明確なすみ分けは考えておらず、競争するところは競争する。ただ、販売代理店網などの違いがあるため、今後事業を展開していくなかですみ分けが生まれてくる部分もあると考えている」と話す。

再エネ由来電力プランも展開

 新会社が展開するもう1つの主力事業が、「RE100」に加盟する企業などに向けた、再生可能エネルギー由来電力の供給だ。

 昨今、ESG投資の高まりや気候変動対策に向け、事業用電力を再生可能エネルギー由来100%とする国際イニシアチブである「RE100」への加盟を表明する日本企業が増加している。こうした背景が後押しする需要拡大を見据え、再生可能エネルギー由来100%の電力プランを展開する。

 イーレックスは現在計画中のものも含め、全国6カ所、合計約350MW(メガワット)の発電所を持つ、国内最大級のバイオマス発電事業者となっている。これらは「再生可能エネルギーの固定買取価格制度」(FIT)を利用して売電しているため、CO2排出量ゼロなどの環境価値を持たないが、非化石証書やJ-クレジットなどの証書を組み合わせてCO2排出係数ゼロの電力を供給する。さらに同社はFITを利用しない“Non-FIT方式”のバイオマス発電事業も計画中で、これらの電力も活用していきたい考えだ。

 なお、現在東電EPは再生可能エネルギー由来100%の法人向け電力プラン「アクアプレミアム」を展開している。こちらについては「今後も引き続き東電EP側で提供し、販売や契約の窓口が新会社になるということはない。エバーグリーン・マーケティングが提供するプランとのすみ分けなどは、今後検討していく」(東電EP 副社長の大亀氏)と話す。

 出資比率が示すように新会社の主導権はイーレックス側にあり、東電EP側に類似するプランがあっても、ある程度の独立性を保ちながら運営を行うようだ。なお、イーレックスは現在の高圧需要家向けの事業および顧客を、将来的には新会社に集約する方針だという。

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