産業技術総合研究所は、日立製作所、デンヨー興産と共同で、福島県にて導入が促進されている再生可能エネルギー電力を化学変換、貯蔵、輸送して水素混焼発電機システムで発電する水素サプライチェーンを実証した。
産業技術総合研究所(以下、産総研)は2020年3月18日、同研究所の再生可能エネルギー研究センター 水素キャリアチームと日立製作所、デンヨー興産が、福島県にて導入が促進されている再生可能エネルギー電力を化学変換、貯蔵、輸送して水素混焼発電機システムで発電する水素サプライチェーンの実証実験を行ったと発表した。
今回実証された水素サプライチェーンは、トルエンを水素キャリアであるメチルシクロヘキサン(MCH)に化学変換するもの。従来システムと比較してシンプルな構成とすることで、設備コストを半減させるシステム開発を行った。
さらに、MCHを製造する水素化反応器内で起こる物理・化学現象の定常データをもとに操作条件の最適化制御マップを作成し、制御器に組み込むことで、反応を制御する手法を確立した。水素が変動して製造されても水素化反応の選択率を99.6%以上とすることができ、反応副生物を少量に抑制する。
さらに産総研は、日立製作所、デンヨー興産とともに、ディーゼルエンジンをベースにした水素混焼発電機システムを保土谷化学工業の郡山工場に設置して燃焼試験を実施した。水素混焼発電機システムは、軽油の代わりに福島県内の学校給食などで使用済みの食用油を原料とするバイオマス燃料を用いて稼働させた。
水素混燃発電機システムは、発電出力300〜500kW、水素混燃率40〜60%で、合計1000時間以上稼働した。また、発電出力300kWの条件では、短時間ではあるものの水素の発熱量割合80%以上で軽油の使用量を80%以上削減できた。
産総研は、今後は再生可能エネルギーをMCH水素キャリアを活用して平準化し、電気と熱を安定して供給することや、石油コンビナートや鉄鋼、化学プラントから生成される副生水素を燃料として地産地消する事業モデルの普及、拡大を図るとしている。
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