ソーラーシェアリングの架台選び、“無理なコスト削減”が生むトラブルとは?ソーラーシェアリング入門(33)(1/3 ページ)

「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回はソーラーシェアリングの事業性に大きく関わる「架台」に起因したトラブルの事例にいて、具体的に解説します。

» 2020年07月20日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 2020年度のFIT制度で低圧規模の全量売電対象としてソーラーシェアリングが残ったことで、改めて野立ての太陽光発電設備とのコスト差が注目されています。その中でも、最もコスト差が出る部分は「架台と施工費用」になるのですが、この部分を収益性など、変に発電事業寄りの視点のみで考えてしまうと、後々大きなトラブルに発展することがあります。

 今回は、前回に引き続きソーラーシェアリングの架台設計について、これまでに私がコンサルティングの中で見てきたトラブル事例から対策を考えます。

 前回の原稿では、ソーラーシェアリングの架台設計には、大きく藤棚式とアレイ式という2つのパターンがあることを解説しました。このどちらのパターンでも架台のトラブルは起きていますが、今回は営農面でトラブルが起きやすいものからまとめていきます。

営農面でのトラブルその1〜遮光率の問題〜

 営農面で最も多いトラブルは、遮光率がそもそも作物に適していなかったり、遮光率が高すぎて将来的な作物変更が難しかったりする場合が挙げられます。前回も述べたように作物の生育条件は光飽和点だけで決まるものではなく、それ以外の環境要因も複合的に考える必要があります。例えば、設備下の湿度や土中の水分量などは、やはり日射量に起因して変化します。

 この部分を考慮した設計に失敗すると、作物がうまく育たなかったり、それによって作物転換を行ったりする際に、最終的には太陽光パネルを間引いて遮光率を低減させ、日射量を確保することが必要になります。そうなると発電設備全面での間引きが必要になりますから、発電量の低下を招き、売電事業側の収支計画に大きな影響が生じてしまいます。

高遮光率設計は将来的な作物転換が必要になった場合に問題となる

 事業開始前の計画段階に取れる対策としては、当初から複数の作物生産を前提とした余裕のある遮光率の設定や、光飽和点以外の要素も加味した営農計画が重要です。

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