ソーラーシェアリングはなぜ大きく普及しないのか、その理由を考える【後編】ソーラーシェアリング入門(37)(1/2 ページ)

「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は前回に引き続き、筆者によく寄せられる「ソーラーシェアリングはなぜ大きく普及しないのか?」というテーマについて考察します。

» 2020年09月28日 07時00分 公開

 前回は、日本においてソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が大きく普及しない背景について、事業コストなどの観点から考察しました。

 後編となる今回では、融資獲得の課題や、発電事業主体を誰が担うべきかといった問題からソーラーシェアリングの普及策について考察していきます。

事業の立ち上げに必要な融資獲得の課題

 ソーラーシェアリングの黎明期から継続した課題の一つが、融資をいかに受けるかです。初期は農林水産事業を持つ日本政策金融公庫からの借り入れ実績が多く、その後に城南信用金庫がソーラーシェアリング向けの融資を本格的に始めてからは、信用金庫による融資事例も増えてきました。

 さらに、ここ2年ほどはJAバンクの融資メニューからソーラーシェアリングに対応するものが加わった他、神奈川県信用保証協会がソーラーシェアリング事業向けの保証メニューを出すなど、徐々に融資環境は整ってきました。

 融資を獲得する際には事業スキームも考慮する必要があります。中でも地銀などでも比較的融資可能といわれやすいのが、農地を所有している農業者が自分でソーラーシェアリングとその下の農業を一体的に実施するケースです。こうした事業スキームの場合は、事業の責任範囲が明確になるため、金融機関も融資しやすい側面があります。

安定した農業経営がソーラーシェアリング実施の大前提になる

 反対に、発電事業者と農業者が全く別の主体になってくると、融資の難易度は上がります。ここは、農業の安定的な実施が発電事業の前提になるというソーラーシェアリングの制度的な特徴が、大きく影響しています。

 2018年5月にソーラーシェアリングに関する一時転用許可期間を条件付きで10年以内とすることが認められるようになり、この頃から融資に前向きな金融機関が増えてきた印象があります。10年以内の許可を得るための条件の一つが「担い手」による営農の実施ですが、これが充足される場合は安定した農業経営が見込まれるという点で、融資を得やすいといえるでしょう。

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