ソーラーシェアリングはなぜ大きく普及しないのか、その理由を考える【後編】ソーラーシェアリング入門(37)(2/2 ページ)

» 2020年09月28日 07時00分 公開
前のページへ 1|2       

発電事業の主体を誰が担うべきか

 将来的に、ソーラーシェアリングが太陽光発電市場の中でメインストリームになっていくために、最も課題になると考えているのが発電事業主体を誰が担うべきかという点です。2反歩(2000平方メートル)程度の水田や畑で低圧規模のソーラーシェアリングをやろうと考えた場合、設備投資額はおよそ1500万円程度です。収益については、今年度のFIT対象として全量売電が出来れば、130〜140万円程度の売電収入が期待できます。

 しかし、農林業センサスから国内の農業経営体の状況を見ると、農業経営の多角化を図っている農業生産関連事業を行っている経営体であっても、年間の農産物販売金額で1000万円を超えるのは全国で2万8576経営体(2015年時点)です。これが5000万円以上となると3503経営体にとどまるという状況で、低圧のソーラーシェアリング1基分の投資額ですら年間の販売金額を上回ってしまいます。農業経営に収益をプラスすることがソーラーシェアリングの目的ではありますが、日本の再生可能エネルギー導入量拡大を目指してこれから100GWや200GWという規模を導入していこうとなると、その投資規模は到底農業者だけでは賄いきれません。

 私も全国各地を巡りソーラーシェアリングの講演活動を行ってきたなか、また自ら法人としての農業参入を果たしてみた実感として、これまでのソーラーシェアリング普及は「農業者に取り組んでもらうもの」という意識が強すぎたように思います。今後、農林水産省が提唱するVEMS(Village Energy Management System)や、環境省の地域循環共生圏といった政策概念によって分散型の再生可能エネルギー導入を進め、その軸の一つにソーラーシェアリングを据えていくとすれば、改めて地域エネルギー事業のスキームを新たに考える必要があります。地域新電力や地方自治体などが発電事業を担い、地元の農業法人や組合がその下で農業を担い、それぞれが協力して地域の発展に貢献する事業モデルが欠かせません。

 まとまった農地を抱える町村レベルの地域になればなるほど、どれだけ域内にソーラーシェアリングの適地があったとしても、地元の企業や農業者、地方自治体だけで数百MW規模の発電事業を運営することのハードルは高くなるでしょう。もしかしたら、産業誘致として、地域と大手の発電事業者などが組むということも考えられるかも知れません。

飛躍的な普及には新たな仕組みづくりが重要に

 ここまで、ソーラーシェアリングの普及に向けて欠けていたものは何だろうかということを、さまざま角度から見てきました。ソーラーシェアリングは農業と共生する太陽光発電事業として、農業者の所得を向上させる手段として最初は政策的に取り入れられてきました。しかし、2013年3月末に一時転用許可制度での導入が認められるようになってから7年半が経ち、ソーラーシェアリングが日本の再生可能エネルギー大量導入に向けたメインストリームになることへの期待が高まってきたことで、今後10年の飛躍的な導入拡大を果たすための仕組み作りが必要になってきたと感じています。

 そのためには、設備下でどのような農業ができるのか、生産性や作業性の向上をどうやって図っていくのか、作られたエネルギーを農業にどのように活用するかといった視点から、日本における地域エネルギー事業の普遍的なスキーム作りまで幅広いテーマを考えていかなければなりません。

 今回は問題的を主に取り上げましたが、個別の進むべき方向性についても引き続き取り上げていきたいと思います。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.