再エネ導入で躍進する静岡県浜松市、ソーラーシェアリングに対する現場の声とはソーラーシェアリング入門(38)(2/2 ページ)

» 2020年10月12日 07時00分 公開
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2.農林水産省・環境省・資源エネルギー庁が制度・政策面を解説

 県内初の本格的なソーラーシェアリングセミナーということで、多くの皆さんの関心事であろう制度・政策面についての理解を深めていただきたいと考え、今回は農林水産省・環境省・資源エネルギー庁の各省庁に基調講演の登壇を依頼しました。それぞれの立場から再生可能エネルギーへの取り組みとソーラーシェアリングの位置付けを話していただき、その上で私からソーラーシェアリング事業の適性化についてお話しするというプログラムです。

(左)農林水産省食料産業局バイオマス循環資源課 再生可能エネルギー室 川中室長/(右)資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課 濱係長

 最初に、地元浜松市の産業部エネルギー政策担当課より冒頭挨拶と、浜松市の再生可能エネルギー導入に関するお話をいただきました。その後、農林水産省からは農山漁村における再生可能エネルギー活用の視点、環境省からは地域循環共生圏やSDGsの視点、資源エネルギー庁からは昨今のFIT制度の視点から、それぞれソーラーシェアリングについての講演をいただきました。単に農業者の所得向上による農業振興や、太陽光発電の適地拡大による再生可能エネルギーの普及というだけではない、政策分野を横断したソーラーシェアリングの持つ意義や価値を聞くことが出来る貴重な機会になったと思います。

3.ソーラーシェアリング設備の適正化と実例

 制度・政策についてのお話の後は、私から「農業支援としてのソーラーシェアリング設備の適正化と実例」と題して、最後の基調講演を務めさせていただきました。単にソーラーシェアリングの事例紹介というだけではなく、農業が上手くいっていない事例や自然災害による被害を受けた事例についても言及し、農業と共生するソーラーシェアリング実現のために必要なことは何なのかを取り上げる内容です。

ソーラーシェアリングの適正化について講演

 農業面で不適切な事例が増える背景には、そもそも設備の設計に際して農作物や農作業に配慮すべきという意思を施工会社やメーカーが持っていないこと、一時転用許可の審査を行う行政側にも十分な知見がないことなどが挙げられます。自然災害による設備の損壊が増える背景も、太陽光発電事業では初期の設置コストばかりが重視されてしまうことで、架台強度の不足や基礎施工の不備によって台風などの暴風を受けた太陽光パネルの脱落や架台の倒壊が発生しています。今回の参加者には行政や金融機関の方も多かったため、発電事業者や事業をチェックする側が不適切な事例を見抜く知識を持つことの重要性に言及しました。

4.今後の展開

 今回の浜松市でのソーラーシェアリングセミナーは、改めてソーラーシェアリングに対する地域の関心の高さを感じるとともに、必要な情報が十分に行き渡っていない状況も痛感することになりました。行政関係者、市議会議員、金融機関や農協からもセミナーへの参加をいただいた中で、多く聞かれたのはもっと実際の取り組み事例を知りたいということや、政府の政策として今後本当に普及させる方向に向かうのかを知りたいといった内容です。また、農業が上手くいっていないような不適切な事例が目立ってしまうことで、ソーラーシェアリングに対して否定的な意見を持つ方も増えてしまっており、適正な事例を増やすことで懸念の払拭を図りたいというお声がけもいただきました。

 今後も同様のセミナーを各地で開催して行くことで、改めてソーラーシェアリングに対する認知度の向上や取り組みの推進を図っていこうと思います。

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