次期「エネ基本計画案」に感じる懸念、再エネの導入拡大に向けた課題とはソーラーシェアリング入門(48)(1/2 ページ)

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回は7月21日に経産省が公表した新たな「エネルギー基本計画」の素案について、筆者の感じた懸念点について解説します。

» 2021年08月02日 07時00分 公開

 7月21日に経済産業省・資源エネルギー庁から「第6次エネルギー基本計画(素案)」が示され、その内容についてさまざまな議論が交わされています。ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)を含む太陽光発電は2030年までに迅速な大量導入が可能な再生可能エネルギー電源種ではありますが、やはり不十分な扱いとなりました。今回は、この素案の内容について現段階での意見を述べていきます。

再エネ導入目標の引き上げも、個別政策の整備が不十分

 気候変動対策目標の引き上げに対応した再生可能エネルギー導入目標の引き上げは行われましたが、個別政策は従来のままで全体の目標達成に向けた対応ができていません。特に足を引っ張る可能性のある事業規律強化とコスト低減という目先は相反しかねない政策対応や、適地確保と系統制約の克服といった喫緊の課題には真剣に向き合う必要があります。これらの政策対応のポイントとして挙げられた項目は、それぞれ導入拡大のアクセルとブレーキになり得るため、その中での優先順位も整理すべきです。

FIT及びFIP制度の導入目標に対する不整合の放置

 これまで再三指摘を重ねてきましたが、現行のFIT・FIP制度は今回のような大幅な再エネ導入目標引き上げを想定していません。つじつま合わせのようにFIT・FIP制度による導入見込み量を低く抑えるのではなく、より一層の導入加速を支援する制度に抜本的な作り直しを図るべきです。

 再生可能エネルギーの導入を市場に任せたいのであれば、「プレイヤーが増え市場が拡大することによってコストが低下していく」という基本的な視点を忘れてはなりません。FIT制度によって太陽光バブルは起きましたが、産業政策がなかったためにプレイヤーが定着しませんでした。ここ数年は太陽光発電の導入抑制を図ってきたことを経済産業省・資源エネルギー庁も認めている中で、プレイヤーの減少によって今後は確実に設置費用の増加が進みます。その現実から目を背けるべきではなく、まずは2030年に向けた劇的な市場拡大を図るために現在の課題と真剣に向き合い、再度の市場拡大と産業育成に必要な政策措置を検討すべきです。

再生可能エネルギー熱利用の扱いが小さすぎる

 我が国の再エネ政策は電力一辺倒で進んできましたが、ここに来ても再生可能エネルギー熱利用の扱いが小さすぎます。2030年度に至っても電化率が30%程度にとどまるという見通しが示されているため、脱炭素化に向けては、残りの70%を占める熱・燃料部門においても、再生可能エネルギー比率を1%でも向上させていくべきです。

 エネルギー基本計画(素案)の本文中でも、再生可能エネルギー熱はp.29の冒頭、p.37とp.62の最後にそれぞれ3行触れているだけです。本文だけで3800行もある文章の中で合計9行程度しか扱われていない再生可能エネルギー熱利用ですが、p.37では「我が国の最終エネルギー消費の過半を熱利用を中心とした非電力部門が占めて」いると記載があり、電力部門だけでなく熱部門においてもより一層の再生可能エネルギー政策を推し進めるべきです。

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