次期「エネ基本計画案」に感じる懸念、再エネの導入拡大に向けた課題とはソーラーシェアリング入門(48)(2/2 ページ)

» 2021年08月02日 07時00分 公開
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再生可能エネルギー事業を進めるプレイヤーが見えない

 今回の素案では、少なくとも2030年時点での太陽光発電導入量は現在の2倍以上になり、「更なる追加見込み量」として曖昧に残された導入目標値も実質的に太陽光発電が担うしかないであろうことを考えると、現状の3倍程度は導入することを想定しておかなければなりません。

 なぜなら、2020年代後半に他の電源種が目標未達となりそうな場合、短期間で導入量の上積みが可能となるのは太陽光発電だけだからです。

 問題は、追加で100GW近い導入を誰が担うのかです。設備投資額としては15〜20兆円が予想されますが、あと実質8年と考えると単純計算で年間2〜2.5兆円の投資を行っていく必要があります。しかし、先にも述べたように2017年度以降のFIT制度下における太陽光発電の抑制方針によって発電事業者から施工会社やメーカーまで多くのプレイヤーが退出しており、これだけの投資を引き受けられる先がありません。熱狂的な太陽光バブルだった2014〜2015年頃を上回る導入量を、今後毎年続けていかなければならないと考えると、改めて国内外から再生可能エネルギーに投資を呼び込むだけの環境を整え積極的な人材育成も図る必要があります。

 残念ながら、今回の素案ではそうした「誰が導入を担っていくのか」という視点も欠落しており、それがないことで個別政策も欠落していると見られます。

 以上、まず大きく4点を挙げましたが、とにかく昨年来の2050年カーボンニュートラル目標や、2030年の気候変動対策目標引き上げという政治方針に対応すべく、継ぎ接ぎで作り上げられたエネルギー基本計画(素案)であることは否めません。本来は2018年の第5次エネルギー基本計画の段階でこれだけの目標引き上げが行われていれば、風力発電を始めとして他の再エネ電源種も手の打ちようがあったのでしょうが、この3年のロスは非常に痛いです。その分を巻き返すだけの内容にも、残念ながらなっていません。

 他にも指摘すべき点は多々ありますが、敢えて今指摘するなら再エネの導入見通しを含めて目標値のシナリオが一つしかないことも大きな懸念点です。例えば、原子力発電がこの計画通り再稼働しなかった場合に何で不足分を補うのか、あるいは再生可能エネルギーが増えなかった場合にどうするのか、そして省エネ量が予定通りに確保できない場合など、複数のパターンを並行して検討すべきです。

 既に多方面から今回の素案に対して意見や指摘が述べられていますので、私も今後必要な提言を行っていきます。

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