再エネ普及に期待の「地産地消型VPP」――その飛躍に必要な技術とモデルケースを考える連載「問われる“日本版VPP”の在り方」(3)(1/3 ページ)

再エネ普及や脱炭素化につながる事業モデルとして期待される「バーチャルパワープラント(VPP、仮想発電所)」。中でも地域の脱炭素化に向け、“日本版VPP”の一つとして注目されるのが「地産地消型VPP事業」だ。同事業を解説する本連載、最終回の今回は地産地消型VPPの飛躍に向けて参考とすべきビジネスモデルや最新のテクノロジーについて、海外事例にも触れながら解説する。

» 2021年09月09日 07時00分 公開
[株式会社クニエ 谷津 綾乃スマートジャパン]

 第1回では、バーチャルパワープラント(VPP、仮想発電所)のグローバル動向と日本の現状整理、第2回では脱炭素化社会の実現に向けて期待が高まる、地産地消型VPPの現状と課題についてお伝えした。最終回となる今回は、地産地消型VPPの飛躍に向けて参考とすべきビジネスモデルや最新のテクノロジーについて、海外事例にも触れながら解説する。

VPP事業の普及に欠かせないデジタルテクノロジー

 第2回「地産地消型VPPの現状と課題」で述べた通り、地産地消型VPPで取り扱われるリソースは今後多様化していく。メガソーラーのような大型発電所のみならず、各家庭の屋根に置かれた数kWレベルの太陽光発電や蓄電池、EVなど、発電パターンが異なる種々リソースを束ね、瞬時に需給を一致させるためには、それらの稼働状況を管理し、需要データと掛け合わせた分析をタイムリーに行い、各種リソースを制御していくデジタルテクノロジーの活用が必須である。

 日本においても、VPP実用化に向けてさまざまなテクノロジーが検証されているが、既にVPPの商用化サービスを行う欧米企業では主に、IoTを活用したリソースの監視・制御と、AI解析による電力のリアルタイム取引を実現している。例えば欧州において8GW強のVPP規模を有する独Nextkraftwerke(ネクストクラフトベルケ)社は、自社で開発した「NEXT Box」というSIMカードを備えた制御装置と、VPP用ソフトウェアプラットフォーム「NEMOCS」を通じて、各種リソースの稼働データ、気象情報、グリッドデータ、電力市場価格データなどの情報を、アルゴリズムや機械学習で複合的に分析し、的確な制御を行っている。

Nextkraftwerke社が提供する制御装置「NEXT Box」 出典:Nextkraftwerke

 電力プレーヤーとしての地位を築きつつある米Tesla(テスラ)社も、同社が開発したVPP取引プラットフォーム「Autobidder」を通じて、機械学習と最適化アルゴリズムにより電力価格などを予測し、同社製の蓄電池、EVなどのリソースをタイムリーに最適運用した上、余剰電力を電力市場へ売電できるソリューションを提供している。

 これらの事例のように、リソースのデータ収集と分析、その結果に基づく最適な制御技術は、VPP事業を支える必須のテクノロジーであるといえる。しかし、海外ではより高度なVPP事業を見据えた先進的な技術の活用やビジネスモデルの模索も始まっている。以下では、海外の事例を中心に、日本における地産地消型VPP事業の飛躍に向けたヒントとなり得る技術やビジネスモデルを紹介したい。

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