再生可能エネルギーの導入拡大に伴って、系統の安定化に欠かせない電力需給の「調整力」の確保が重要な課題となっている。今後、調整力をどのように確保していくのか、政府の委員会で検討が進められている。
2050年カーボンニュートラル実現に向けては、大量の変動性再エネ電源(風力・太陽光等、以下VRE)の導入が想定されている。
電力広域的運営推進機関(広域機関)が2021年に策定した「マスタープラン検討に係る中間整理」のシナリオの1つである「再エネ5〜6割シナリオ」(系統増強後)の電源構成は図1のとおりであり、発電量(kWh)ベースの再エネ比率は53%に引き上げる目標となっている。
VRE導入拡大に伴い調整力の必要量も増加することが想定されるため、調整力の広域的な運用・調達についても検討する必要がある。
このため広域機関の「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」では、2040〜2050年を想定した調整力の必要量や対策等について、先行的に北海道エリアを事例として、東北・東京エリアも含めた東エリアでの広域的な検討を進めている。
現在、調整力必要量は、「残余需要予測誤差」「残余需要の時間内変動」「電源脱落」の3つの事象への対応の必要量として算定している。
残余需要とは、需要電力(太陽光発電の自家消費分を除いたもの)から、VREの出力を控除した需要のことであるため、VREの出力変動は「残余需要予測誤差」「残余需要の時間内変動」のいずれに対しても影響を与えることとなる。
これまでの日本国内でのVRE導入実績から、VRE導入量(kW)が増えると再エネ出力予測誤差(kW)が増加する傾向が確認されており、将来的には予測誤差に対応する調整力必要量のさらなる増加が想定されている。
他方、VREの導入が拡大すると、その出力変動は「平滑化効果(ならし効果)」が働き、設備容量に対する変動割合は小さくなることも確認されている。
統計学の定理「分散の加法性」によれば、あるエリアをメッシュ(正方形)状で考えた場合、メッシュ間の変動は無相関であると仮定され、各メッシュに一律に再エネが導入された場合の変動は√N倍となる(設備量が2倍になると変動は√2倍≒1.41倍)。
しかしながら各メッシュ一律ではなく、エリアの中心に再エネが集中して導入された場合の変動は、線形(N倍)となる(設備量が2倍になると変動も2倍)。
北海道エリアのVRE導入状況を確認すると、太陽光は日照環境が良い太平洋側を中心に集中して導入されており、風力発電は風況が良い日本海側を中心に集中して導入されている。これは東北・東京エリアでも同様の傾向である。
再エネは「分散型」電源と呼ばれ、これ自体に偽りはないものの、まったく均一に分散的に導入されるというよりも、特定の場所に集中しがちであると言える。
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