再エネ導入に欠かせない「調整力」、今後どのように確保するのか?エネルギー管理(4/4 ページ)

» 2022年04月25日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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調整力のどの程度確保できるのか?

 後述するように調整力は蓄電池等の多様なリソースから提供可能であるが、ここではまず、現在の調整力提供主体である火力発電により、必要な調整力を確保できるか確認している。

 北海道エリア(2040〜2050年)では、火力による調整力を年間平均で197万kW程度確保可能と試算された。

 上述のとおり北海道エリアの調整力必要量(年間平均値)は144万kWであるが、これらはいずれも平均値である。時間ごとに見るならば、年間8760時間のうち3303時間では調整力が不足することが判明した。

 なお北海道・東北・東京エリアを一体として、地域間連系線の制約が無く、調整力の広域運用が可能であると仮定した場合、東エリア全体で見れば調整力必要量は年間8760時間を通じて確保可能という結果となった。

新たな調整力リソース

 2040〜2050年時点では、火力発電以外にも蓄電池やデマンドレスポンス、VRE自体の制御など、多様なリソースを調整力として活用可能であると考えられる。新たなリソースを調整力として活用するためには、それらリソースごとのグリッドコードを早期に整備する必要がある。

表2.新たな調整力リソースの候補 出所:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

HVDC設備を活用して北海道から東京エリアへ送電

 マスタープランでは、北海道エリアの洋上風力等で発電された電力を、海底HVDC(高圧直流送電)設備(400万kW)を新設することにより、東京エリアに送電する方向性が示されている。

 HVDCは通常のエリア間送電だけでなく、調整力の広域的運用にも活用することが可能である。今後、広域LFC(負荷周波数制御)や短周期広域周波数調整などの実現に向けて、HVDCに必要な機能等の検討が進められる。

地域間連系線のマージンの扱いは?

 現在、需給調整市場を介して調整力を広域調達するために、あらかじめ地域間連系線に調整力用のマージン(△kWマージン)を確保している。

 連系線の同一方向の運用容量には限りがあるため、△kWマージンの確保量を増やすと、卸電力取引に活用可能な空き容量が減少することとなる。

 図8では、再エネ適地エリアAで出力の上振れが発生した場合、需要地エリアBで確保した下げ調整力を活用するためには、卸電力取引段階での送電量が減少する。そのため、結局はエリアAにおける再エネ電源の制御量が増加すると想定される。

図8.地域間連系線の調整力マージンの確保 出所:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

 これとは逆に、エリアAの再エネ下振れに対処するための上げ調整力をエリアBから調達することは、逆方向の潮流となるため、連系線の空き容量に影響を与えない。

 さまざまな調整力のうち、何を自エリア/他エリアから調達・運用すべきであるか、安定供給や経済性の観点から整理が必要であると考えられる。

著者プロフィール

梅田 あおば(うめだ あおば)/ ライター、電力事業アナリスト
専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。
Twitterアカウント:@Aoba_Umed


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