再エネ導入に欠かせない「調整力」、今後どのように確保するのか?エネルギー管理(3/4 ページ)

» 2022年04月25日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

VRE導入量と発電量の予測誤差の相関

 また同様にVRE導入量と予測誤差の相関について調査したところ、設備導入量の増加に対して、予測誤差率が一定、もしくは負の相関傾向になったところや、データの散らばり等もあったこともあり、明確な相関(平滑化効果)は確認できていない。

 つまり現時点では、VRE導入量と予測誤差についてはN倍の相関があると仮定される。しかしながらVREの出力予測については、予測手法そのものが改善・変更されているため、将来の予測誤差の推計にあたっては、予測手法の見直しを反映する必要があると考えられる。

 例えば三次調整力IIの必要量算出においては、複数の気象モデル活用により気象予測精度が向上した結果、概ね10%以上の改善効果が得られている。

 気象予測精度向上の技術開発については、NEDO事業等を通じて1サイクル5年間で10%精度が改善すると仮定する。また2050年までにこれを4サイクル実施すると仮定する。この場合、将来(2040〜2050年)の予測誤差は現在から34%改善(0.9の4乗=0.66倍)すると試算される。

 この予測精度向上の想定のもと、VRE導入量の増加と予測誤差の相関は、「N倍×0.66」と仮定し推計することとした。

再エネ出力制御に伴う調整力必要量への影響

 現在すでに九州、四国、東北、中国エリアで再エネの出力制御(抑制)が実施されているが、再エネ導入の拡大に伴い出力制御が増加していくことが想定される。マスタープラン「再エネ5〜6割シナリオ」における再エネ出力制御率は約39%と試算されている。

図6.予測誤差のイメージ 出所:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

 図6の網掛けの部分では、出力制御が無ければ予測誤差に対応する調整力が必要となるが、実際には出力制御されるため、気象の変動が発生しても再エネの出力は変動しない。このため網掛け部分では予測誤差はゼロとなるため、この範囲での再エネの予測誤差に対応する調整力は不要になると考えられる。

 よって、出力制御値に対して「下振れ」が発生した場合のみを変動として扱い、これに対応する調整力必要量を推計すればよいこととなる。

調整力必要量の推計結果

 上記の前提条件に基づき、再エネ5〜6割シナリオにおける2040〜2050年の調整力必要量が推計されている。

 代表例として北海道エリア(2040〜2050年)では、再エネ導入量2993万kW(太陽光936万kW、風力2057万kW)に対して調整力必要量(年間平均値)は144万kWとなる。これはH3需要(最大3日平均需要)508万kWに対して28%という規模である。

 144万kWはあくまで平均値であり、調整力必要量の年間最小値は16万kW、年間最大値は413万kWと試算されている。

図7.再エネ導入量と調整力必要量 出所:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

 なお東北エリアでは再エネ導入量6191万kWに対して調整力必要量(年間平均値)は289万kW、東京エリアでは再エネ導入量8381万kWに対して調整力必要量(年間平均値)は527万kWと試算された。

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