低温熱需要に対してはヒートポンプ等による電化が期待されている。しかし、中高温域の熱源については現時点、電化が困難であるため、水素・アンモニア等を燃料とするバーナーやボイラーなどの開発が進められている。
最終エネルギー消費のうち、熱・燃料用途が占める割合は74%に上るが、このうち産業部門の熱・燃料用途122百万kLすべてを水素に転換したと仮定すると、必要な水素量は3400万トン/年と試算される。
輸送部門では、水素はエンジン直接燃焼のほか、化学反応により発電する燃料電池(FC)車の燃料としても使用される。普通車はEV化が容易であるが、走行距離の長いトラック等の大型車ではFC化が進むことも考えられる。
国内の小型・大型トラック約210万台がすべてFC化したと仮定すると、水素必要量は約636万トンとなる。
水素コストを化石燃料と比較すると、軽油(120円/L)とパリティ(熱量で等価)とするための水素コストは約50円/Nm3と試算される。
船舶のエンジン燃料としては、短〜中距離は水素が、国際輸送などの長距離にはアンモニアが適していると考えられる。
内航船が消費する重油35億Lをすべて水素に転換したと仮定すると、水素必要量は約111万トンとなる。
A重油と比較した水素のパリティコストは23.3 円/Nm3と試算される(※現在はC重油が大半を占めるが、今後のSOx規制厳格化を見据えてA重油を想定)。
現在鉄鋼分野では、鉄鉱石を還元するために原料炭(コークス)を用いているが、これを水素に置き換えることによる脱炭素化が期待されている。
日本の銑鉄生産量8000万トンをすべて水素還元製鉄に切り替えると仮定すると、水素必要量は約700万トンとなる。
しかしながら、原料炭(200ドル/トン)と比較した水素のパリティコストは約8円/Nm3と試算され、これはエネ基の2050年コスト目標20円の半額以下という非常に厳しい水準である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.