脱炭素のカギとなる「水素・アンモニア」、需要と投資の拡大に向けた方策とは?エネルギー管理(2/4 ページ)

» 2022年04月27日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

2.産業部門〜熱・燃料用途を拡大へ〜

 低温熱需要に対してはヒートポンプ等による電化が期待されている。しかし、中高温域の熱源については現時点、電化が困難であるため、水素・アンモニア等を燃料とするバーナーやボイラーなどの開発が進められている。

 最終エネルギー消費のうち、熱・燃料用途が占める割合は74%に上るが、このうち産業部門の熱・燃料用途122百万kLすべてを水素に転換したと仮定すると、必要な水素量は3400万トン/年と試算される。

表4.最終エネルギー消費(2019年)燃料・熱の割合 出所:水素政策小員会

3.輸送部門〜燃料電池(FC)トラック〜

 輸送部門では、水素はエンジン直接燃焼のほか、化学反応により発電する燃料電池(FC)車の燃料としても使用される。普通車はEV化が容易であるが、走行距離の長いトラック等の大型車ではFC化が進むことも考えられる。

 国内の小型・大型トラック約210万台がすべてFC化したと仮定すると、水素必要量は約636万トンとなる。

 水素コストを化石燃料と比較すると、軽油(120円/L)とパリティ(熱量で等価)とするための水素コストは約50円/Nm3と試算される。

4.輸送部門〜内航船の燃料〜

 船舶のエンジン燃料としては、短〜中距離は水素が、国際輸送などの長距離にはアンモニアが適していると考えられる。

 内航船が消費する重油35億Lをすべて水素に転換したと仮定すると、水素必要量は約111万トンとなる。

 A重油と比較した水素のパリティコストは23.3 円/Nm3と試算される(※現在はC重油が大半を占めるが、今後のSOx規制厳格化を見据えてA重油を想定)。

5.鉄鋼分野〜水素還元製鉄による脱炭素化への期待〜

 現在鉄鋼分野では、鉄鉱石を還元するために原料炭(コークス)を用いているが、これを水素に置き換えることによる脱炭素化が期待されている。

図3.製鉄の還元反応式 出所:水素政策小員会

 日本の銑鉄生産量8000万トンをすべて水素還元製鉄に切り替えると仮定すると、水素必要量は約700万トンとなる。

 しかしながら、原料炭(200ドル/トン)と比較した水素のパリティコストは約8円/Nm3と試算され、これはエネ基の2050年コスト目標20円の半額以下という非常に厳しい水準である。

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