2021年度冬季の公募では、平均落札価格は電源で1万5530円/kW、DRで2323円/kW、合計落札額は約90億円であった。
ただしこれがそのまま公募実施主体(東京電力パワーグリッド:東電PG)の負担となるわけではない。
上述のように電源等は、JEPXや小売電気事業者に対して電力を供出することによる売電収益を得ることとなる。その合計約34億円は東電PGに還元された。よって東電PGの実質的な負担額は、約55億円(落札額の62%)に抑制される。
この費用は最終的には託送料金を通じて、東電エリア内の需要家が負担することとなる。
2022年度夏季は、2021年度冬季の2倍程度の供給力を調達するならば、実質的な費用も2倍(110億円)程度となることが予想される。これは託送料金を通じて、公募実施8エリアの需要家が負担することとなる。
今夏の供給力公募は以下のスケジュールで進められる予定である。
燃料は本来、発電事業者が適切に調達すべきものであるが、ロシア・ウクライナ情勢の悪化により、燃料調達リスクが非常に高まっている。
このため日本全体での燃料調達リスクを軽減する観点から、一種の社会的保険としてkWh公募が実施される。
2021年度冬季のkWh公募は、沖縄を除く9エリア(北海道〜九州)を対象として一般送配電事業者9社による共同調達のかたちで実施されたが、これは今夏の公募でも同様である。
募集対象は昨冬同様に電源とDRであるが、電源については燃料調達の「追加性」が確認できることが大前提となる。公募によりkWh、つまり燃料が調達されるならば、発電事業者がリスクをおかして自社で燃料を調達するインセンティブはそがれてしまうため、モラルハザードが起こりやすいという問題を抱えた仕組みである。
昨冬のkWh公募では3億kWhが募集されたが、これは冬季高需要期の電力需要10日分の約1%に相当する量であり、初回の公募にあたりスモールスタートとして設定された量であった。
募集量3億kWhに対し、落札量は4.19億kWh(ただし、DRの落札事業者は落札決定後に契約辞退)、平均落札単価は35.88円/kWh、合計落札額は約151億円であった。
kWh公募により落札が想定される主な電源はLNG火力であるが、LNGは専用船で輸入するため、燃料の中途半端な余剰/不足を避けるためには、公募量はLNG船1隻の輸送量と整合的である必要がある。
標準的なLNG船1隻の容量は7万トン(=約5億kWh相当)であることから、今夏は10億kWh(標準的なLNG船2隻分相当量)を募集することとした。なお、超過入札があった場合の許容量も、LNG船1隻分(5億kWh)とする。
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