2022年夏の“電力危機”をどう乗り越えるか、供給力と燃料の確保に向けた方策はエネルギー管理(1/3 ページ)

2022年度の夏も、厳しい電力需給となることが予想されている。政府では供給力の確保に向けた対策として、供給力と燃料の公募を検討している。今回は2022年度の夏に向けて検討が進む、kW公募とkWhの概要について紹介する。

» 2022年05月23日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2022年度は夏季・冬季のいずれも電力需給の見通しは非常に厳しいものとなっている。まず供給力(kW面)で見た場合、H1需要(10年に1度の厳気象を想定した最大需要)に対して、夏季7月の東北・東京・中部エリアの予備率は3.1%であり、安定供給に最低限必要な予備率3%をかろうじて上回る状態である。

 なお、予備率とは、需要に対する供給力の余力を表す割合のこと。需給バランス評価においては、地域間連系線を活用しエリア間で供給力を移動させる想定であるため、複数エリアで予備率が同じ数値となる。

 2022年度の冬季についても、東京から中部まで計7エリアで予備率3%を下回り、東京エリアでは予備率がマイナスとなる厳しい見通しであり、追加の供給力対策が不可欠とされている。

 また日本の化石燃料輸入におけるロシア産のシェアは原油で3.6%、LNGで8.8%、石炭で11%であるが、ロシア・ウクライナ情勢の悪化によりこれらの燃料調達リスクが高まっている。これは2020年度冬季に深刻な問題となった「kWh不足」による電力需給逼迫をまねく恐れもある。

 このため資源エネルギー庁はまずは2022年度夏季に向けて、2021年度冬季と同様に、供給力(kW)公募と燃料対策(kWh公募)の両方を実施することとした。

 以下では2021年度冬季kW公募・kWh公募の実績と比較しながら、2022年度夏季公募の概要をkW公募、kWh公募の順にお伝えしたい。

2022年度夏季に向けたkW公募の概要

 追加の供給力(kW)を確保する方策としては、電力広域的運営推進機関による「電源入札」という仕組みが別途あるものの、これは恒常的な供給力不足に対応する仕組みであるため、今夏については昨冬と同様にkW公募として一般送配電事業者による共同調達を実施する。

 図1のとおり8月の予備率は全国的(北海道・沖縄を除く)に4.9%と低いものであるため、今回のkW公募は一種の社会保険的な位置付けであることを踏まえ、北海道・沖縄を除く全国8エリアで公募を実施する。

表1.kW公募実施主体や募集エリアの比較 出所:電力・ガス基本政策小委員会から筆者作成

 また募集対象は、費用最小化の観点から昨冬同様に、電源およびデマンドレスポンス(DR)とする。ただし公募はあくまで追加的な供給力を確保することが目的であるため、2022年度に供給力または調整力として計上されていない電源・DRのみが対象となる。

 なお10万kW以上の規模の電源は、広域機関の「発電設備等の情報掲示板」を通じた買い手募集(電源・電力)が行われていることから、現在も未契約である以下の電源のみが公募対象とされる。

表2.「発電設備等の情報掲示板」の未契約案件 出所:電力・ガス基本政策小委員会から筆者作成

 昨冬の公募容量は55万kW(最大80万kW)に対して落札容量63.1万kWであったが、今夏の募集量は120万kWとする。これは一定の電源脱落リスクに備えたものであり、標準的な火力発電60万kW×2基分が根拠とされている。

 超過許容量は20万kWとして、合計140万kWまでの落札を認めることとなる。

表3.2021年度冬季kW公募量実績 出所:制度設計専門会合

 落札した電源等(供給力提供者)は、一般送配電事業者の指令に基づき速やかに供給力を供出することとなる。

 2022年度から予備率は、単一エリアではなく広域的に管理・運用されていることから、公募調達された供給力は、広域予備率が一定値を下回る際に発動されることとなる。なお電源I’は、広域予備率が8%を下回った際に発動が指令される。

 指令を受けた供給力提供者は、原則、JEPX時間前市場に直接応札もしくは小売電気事業者に供給力を供出することが求められるが、指令のタイミング等によっては不足エリアの一般送配電事業者の調整力として活用されることとなる。

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