再エネ普及のカギとなる「需給調整市場」、開設から1年で分かった課題と今後の対策エネルギー管理(2/3 ページ)

» 2022年05月26日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 三次②の調達不足が現時点では直ちに安定供給上の支障とはなっていないものの、2023年度末の調整力公募の廃止を踏まえると、需給調整市場で確実に調整力を調達することが一層重要となる。

このため三次②の応札量増加対策として一般送配電事業者や広域機関、資源エネルギー庁は市場ルールの見直し等の検討を進めている。

対策1:ブロック時間の見直し

 市場ルールの見直しの1つが「ブロック時間」の見直しである。現在、三次②の入札単位は3時間を1つにまとめた「ブロック」(1日8ブロック)とされている。これをJEPXの通常スポット取引と同様に、30分のコマ単位(1日48コマ)に変更するという案である。

図5.三次② ブロック時間の見直し 出所:電力需給調整力取引所

 従来方式であれば、調整力提供者は3時間ブロック内の6コマのうち最小供出可能量で応札せざるを得ず、調整力の一部(図4の白い部分)を活用することが出来なかった。また調整力を募集する側も、ブロック内のコマの最大値で募集せざるを得ず、コマによっては募集量が過剰となる問題があった。

 30分コマ単位に変更することにより、この2つの問題が解消される。

 制度設計当初は、短時間での調整力持ち替えは周波数調整に悪影響が生じることが懸念されたため3時間ブロックとされたが、三次②は「調整力」というよりも「供給力」に近い商品であり、周波数への影響は限定的であるため、30分コマ単位に変更可能と判断された。

 なお入札単位を30分コマ単位に変更することは、「歯抜け約定」リスクが高まることを意味する。歯抜け約定を避けるため事業者が応札を抑制するならば、結局三次②の応札量は増えない可能性もある。

 このためJEPXスポット市場と同様に、ブロック入札(複数コマの同時約定)を需給調整市場にも導入することが提案されている。

対策2:下げ代不足への対応

 現在の制度では、太陽光の出力が大きく残余需要が少ない時間帯においては、発電事業者は「下げ代不足」による余剰インバランスを発生させるリスクがあるため、一部の電源は三次②として供出できないという課題があった。

 このため送配電事業者が別途確保した調整電源の出力を抑制することを前提として、当該電源をバランシンググループの発電計画には組み込まず、三次②へ応札できるように市場ルールを変更する。

対策3:応動時間の見直し

 従来、三次②は簡易指令システムで接続されたリソースもあるため、システム操作時間等に余裕を持たせるため、応動時間は45分以内であることが商品要件とされた。

 しかしながら、現時点の三次②リソースの大半は専用線で接続されているため、ゲートクローズ(実需給の1時間前)直後の指令発信が可能である。

 このため応動時間を45分から「60分以内」へと緩和することにより、延長15分に応じた供出量の増加や、新たなリソースが三次②として応札可能となることが期待される。

図5.三次② 応動時間の緩和 出所:需給調整市場検討小委員会

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