太陽光発電を目的とした林地開発許可は厳格化へ、複数の基準を見直す方針に法制度・規制(2/3 ページ)

» 2022年06月10日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

小規模林地開発は面積基準を見直しへ

 1ha以下の小規模な林地開発は、市町村長に提出される「伐採届出」および伐採後の造林の届出により把握されている。近年の伐採届出の推移は図4の通りであり、太陽光発電施設の設置に係る届出が一定の割合を占めている。

図4.伐採届出の推移 H21〜R元年度(2009〜2019年度) 出所:林野庁

 なお都道府県に対するアンケート結果(表1)では、1ha以下の林地開発の土砂流出等の発生率は、太陽光発電ではその他事業と比べ、有意に高いことが明らかとなっている(2013年〜2019年度)。

 さらに、調査対象は少数ではあるものの、衛星画像や現地調査を組み合わせた調査からは、潜在的に都道府県アンケート結果の約2倍の件数の土砂流出等が発生している可能性があると林野庁では推定している。

表1.1ha以下の林地開発の土砂流出等の発生件数 出所:林野庁

 このため災害発生率の高さを踏まえ、太陽光発電に限っては、林地開発の面積基準を0.5ha程度に厳格化することが提案されている。

 なお、林地開発許可の規制を逃れるため、意図的に事業地を1ha以下に分割することも想定されるが、すでに現在の林地開発許可制度においては開発行為の「一体性」が定義されており、例えば以下のケースではいずれも林地開発許可が必要であると整理されている。

図5.林地開発「一体性」の取扱い 出所:林野庁

 しかしながら、現在も判断が難しい事例も存在するため、今後、判断基準を一層明確化する予定としている。

設計雨量強度も見直しへ

 これまで林地開発許可制度では、排水施設は「10年」、洪水調節池は「30年」の降雨確率年を設定し、豪雨等に備えてきた。

 ところが、文部科学省および気象庁の「日本の気候変動2020 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告」によると、近年では過去と比較して大雨や短時間豪雨の頻度が増加し、極端な降水の強度も強まっており、この傾向は将来も続くと予測されている。

表2.降雨形態の変化 出所:「日本の気候変動2020」

 一般的に太陽光発電施設では、パネルの遮光により植生が発達しにくいなど、他の開発施設と比較しても土壌流亡が起きやすいと考えられる。このため排水施設については、降雨確率年が20〜30年の設計雨量強度を採用可能とするなど、地域や現場の状況等を踏まえて設計雨量強度を変更できるようにすることが提案されている。

 また洪水調節池についても、河川管理施設と同等の「50年」降雨確率年に対応する規模とすることが検討されている。

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