上記シナリオと前提条件のもと、一例として東北エリアでは、調整力必要量の年間平均値は377万kWと推計された。2019年時点と比較して、再エネ設備量は8.3倍の増加に対して調整力の必要量は3.9倍に留まっている。
なお377万kWはあくまで年間平均値であり、調整力必要量の最小値は80万kW、最大値は769万kWと推計されている。
調整力377万kWの内訳としては、再エネの予測誤差への対応分207万kW、再エネ時間内変動76万kWのほか、電化による需要増加への対応分が94万kWと一定の大きさとなっている。
電化の進展により、東北エリアの電力需要は2019年比で48%増加が見込まれており、調整力必要量はH3需要に対して、19%と推計される。これは年間を通じて各月20%前後とほぼ同じ傾向である。
前項では調整力の「必要量」を推計していたが、ここでは調整力の「確保可能量」の試算を行っている。
シナリオは同じく「基本シナリオ(2050 Without)」に基づき、再エネの出力制御率(年間平均)を増加させないことを前提条件としている。
試算では現状の調整契約の有無は考慮しておらず、火力・揚水・蓄電池の余力のみを調整力として扱っている。つまり需要家によるデマンドレスポンス(DR)や、分散型再エネ電源の制御等による調整力は含まれていない。
よって、将来的には表3の数値以上の調整力が確保される蓋然性は高いと考えられる。
東3社ではほぼ年間を通じて調整力を確保できる試算結果となったが、北海道エリアにおいては、年間8,760時間のうち1時間のみ、調整力必要量を確保できない時間が発生した。
基本シナリオ(2050 Without)では蓄電池の導入(北海道エリアでは42万kW)もすでに想定されているほか、地域間連系線も当該試算では最大限活用されていることから、この不足分に対しては、DR等の別の調整力リソースで対応する必要がある。
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