「2050 Without」の調整力kWhの費用については、2019年度の調整力kWh費用実績をもとに試算している。試算対象はここでも東3社である。
上述のように調整力必要量は、再エネの予測誤差は0.66×N倍、時間内変動はN倍で推計する。また、上げ調整単価および下げ調整単価は2019年度実績と同額であることを前提とする。
まず、東3社の調整力費用2019年度実績値は約400億円である。
この内訳としては、再エネ予測誤差が67%、再エネ時間内変動が33%を占めており、調整力費用400億円をこの比率で按分し、それぞれの金額を「2050 Without」に向けて引き伸ばすことにより、将来の調整力kWh費用を試算したものが表7である。
よって、「2050 Without」における調整力kWh費用は1,851億円と試算される。事務局では、ここから2019年度実績400億円を差し引くことにより、今後の再エネ増加に伴う調整力kWh費用を1,451億円と示している。
上述のようにΔkW費用は315億円であることから、東3社の調整力費用は合計1,766億円/年と試算される。
これはさまざまな前提を置いた上での概算であり、上げ/下げ調整単価が変われば、総額も大きく変わり得る。
なお、マスタープラン基本シナリオ「2050 Without」における全国の再エネ設備量は、東3社の約2倍であることから、全国での調整力費用は年間3,532億円程度と概算される。
本稿では紙幅の都合上、詳細は割愛するが、広域機関では「慣性力」の確保についても、一定の試算を行っている。
シナリオや前提条件により幅があるものの、慣性力不足に対応する追加費用概算は50億〜250億円/年程度と試算された。
今回の試算はいずれもさまざまな前提条件を置いたものである。
調整力の必要量自体は、電力需要・再エネ導入量により変わるものであり、調整力をどのようなリソースから供出するかによって、調整力単価や供出可能量も大きく変わり得るものである。
将来の費用は、現在の制度設計や技術開発等により変わり得るものであるため、kWhやkW、ΔkW等の全体費用の最適化が進められることを期待したい。
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