電力需給の安定化を担う「需給調整市場」、一次調整力の広域調達も実施へエネルギー管理(1/4 ページ)

電力系統の安定化に必要な「調整力」を取引する需給調整市場。最も素早く需給調整に利用できる「一次調整力」の全国的な広域調達の開始に向け、課題の整理と検証が行われた。

» 2022年08月31日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 一般送配電事業者が、周波数調整や需給調整を行うための調整力をより効率的に調達・運用するため、需給調整市場が開設された。

 調整力は、その応動時間(速さ)等の違いにより、一次調整力、二次調整力、三次調整力に区分される。

 例えば電源脱落時においては、まず高速な一次調整力が応動を開始し、二次・三次へと受け渡していくことにより、周波数を基準値に回復させていくこととなる。

図1.電源脱落時の調整力応動・受け渡しイメージ 出所:需給調整市場検討小委員会

 従来の調整力公募と異なり、需給調整市場では調整力を広域的に「調達」・「運用」することを特徴としているが、調整力の確保量がエリア間でかたよりが生じることや、地域間連系線の事故等により、周波数調整に影響を与えることが懸念される。

 このため広域機関の「需給調整市場検討小委員会」では、シミュレーションの実施等により、調整力の広域的調達の可否を検討しており、今回その第31回会合において、一次調整力の広域調達開始が判断された。

一次調整力の特徴と役割

 一次調整力は応動く時間が10秒以内と、需給調整市場の中では最も高速な商品であり、2024年度からの調達開始を予定しているが、広域調達の可否についてはこれまで検討中とされてきた。

 一次調整力は火力や水力発電のガバナフリー運転により供出されるが、ガバナ(調速機)により周波数を検出して自動的に応動する自端制御であるため、中央給電指令所からの指令が不要であるという特徴がある。

表1.一次調整力の商品要件 出所:需給調整市場検討小委員会

 同一周波数(50Hz・60Hz)系統内で交流連系されている範囲内では、火力等の発電機はすべて同じ周波数で回転している。

 一次調整力は、時々刻々と変動する周波数偏差を自端で検知し応動することから、現在でも東北・東京間(50Hz)、および中部・北陸・関西・中国・四国・九州間(60Hz)の広域的な「運用」が自然に実現されていると言える。ただし、北海道は直流設備で連系されているため、単独エリアとなる。

図2.調整力の広域運用が可能な範囲 出所:需給調整市場検討小委員会

 現在、一次調整力に該当するガバナフリーについては、一般送配電事業者がエリアごとに公募調達したうえで、日々の需給運用において必要とされる量を、公募調達した電源を系統並列することにより確保している。

 今後2024年度以降については、需給調整市場で落札したΔkWのほか、容量市場で約定した電源のうち「調整機能あり電源」の余力を活用して、日々の需給運用を行うこととなる。

 容量市場のリクワイアメントでは、調整機能を有する電源は、一般送配電事業者からの指示に応じる「余力活用に関する契約」を締結することが定められている。現在、一次調整力(≒ガバナフリー)の必要量は、系統容量の3%程度とされている。

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