他エリアから地域間連系線を通じて電力量kWhが流入しているエリア(図3ではBエリア)では「需要>供給力」となっている。
この状況において連系線がルート断した場合、Bエリアは供給力不足により周波数が低下する。
Bエリアで一次調整力調達量が少ない場合、周波数低下を抑制しきれず、周波数低下リレー(UFR)等の動作に伴う停電が発生する可能性が生じる。
連系線ルート断時に周波数がどの程度低下するのかは、当該連系線に元々どの程度の電力量が流れていたのかによって異なる。
地域間連系線では、熱容量や周波数維持など4つの制約要因の限度値のうち、最も小さいものを連系線の運用容量としている。
周波数低下が1Hzを超えると発電機の解列に至る可能性が高いことから、運用容量が周波数維持限度潮流で定められている連系線については、連系線ルート断時の周波数低下を1Hz以内に抑えるよう、連系線の運用容量が設定されている。
この場合、自エリアで系統容量の3%に相当するガバナフリー量を調達する前提において、連系線の運用容量は、系統容量の5.2%と算定されている。通常、この容量5.2%がJEPXスポット市場等のエネルギー(kWh)取引に充てられることとなる。
ここで仮に、一次調整力の必要量(系統容量の3%)すべてを他エリアから広域調達するならば、当該連系線には一次調整力用のΔkWマージンが3%確保されることとなる。
この結果、スポット市場等のエネルギー(kWh)取引に充てられる容量は、5.2%−3%=2.2%に減少することとなる。
また小委員会では、中西エリアの負荷特性を前提としたシミュレーションを実施したところ、一次調整力全量をエリア外調達とした場合の周波数維持限度潮流は、系統容量の3.38%という結果となった。
つまり、一次調整力を全量エリア外調達した場合における連系線潮流が系統容量の3.38%以内であれば、連系線ルート断が発生しても、周波数低下は1Hz以内に抑えることが可能である。
上述のとおり、kWh流入可能量は2.2%なので、
周波数維持限度潮流:3.38%>kWh流入可能量:2.2%
となる。
一次調整力全量をエリア外調達した場合に、連系線ルート断が発生した際のシミュレーション結果としては、周波数低下は最大でも0.66Hzとなり、1Hz以内に収まっているため、発電機の連鎖脱落による供給支障に至らないことが確認された。
なお、東北・東京間および関西・中国間においては連系線に2ルートがあり、N-2故障においても交流連系が保たれるため、一次調整力の広域調達にほとんど支障が無いと考えられる。
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