そもそも調整力を広域的に調達することの目的とは、他エリアに立地する安価な電源を活用することにより、総費用を低減させること、つまりメリットオーダーの実現にある。
エリア間で調整力費用に差がある場合、調整力を広域調達した結果として、エリア間で約定量に差が生じること、つまり調整力の確保量に偏りが生じることが起こり得る。
このため、一次調整力の偏在による影響について、表2の3つのケースに分類して影響評価が実施された。
「ケース1:平常時の周波数調整(地域間連系線は接続)」および「ケース2:電源脱落等ローカル系統での事故(連系線は接続)」については、一次調整力調達量がエリア間で偏りを生じた場合でも、日々の需給運用は対応可能であり、広域調達が可能と判断された。
なお、将来の更なる再エネ大量導入に向けては「慣性力」の確保も必要と考えられている。慣性力では、その電気的距離の違いにより、周波数変化率(RoCoF)の低減効果が異なることが知られており、極端に他エリアからの調達に依存することは困難と考えられる。
交流連系が分断される「ケース3」については、一次調達量の多寡が分断エリアの周波数維持に影響を与えうるため、連系線潮流の向きに着目して検討が行われた。
同一周波数で交流連系されている図3のA・Bエリアにおいて、Aエリアでは一次調整力が不足しており、Bエリアから調達していると仮定する。同時に、Aエリアでは供給力(発電量kWh)は豊富であり、BエリアにkWhを移出していると仮定する。
Aエリアでは「需要<供給力」の状態であるため、連系線がルート断した場合、供給力過多による周波数上昇を防ぐため、Aエリア内の電源の出力を抑制する。
その結果、出力を抑制された調整機能を有する電源に「上げ余力」が生じることにより、一次調整力を確保することが可能となる。
よって、Aエリアは連系線ルート断後も単独エリアとして運用継続は可能であるため、一次調整力を広域調達することは可能と判断された。
ただし図3では、AエリアのG1やG2といった電源は、調整機能を具備していることを大前提としている。需給調整市場で約定しないため、一次調整力が不足しているように見えるものの、Aエリアには一次調整力が存在する。
今後、Aエリアで一次調整機能を具備しない再エネ電源が増加する場合、連系線潮流が流出か否かを問わず、単独エリアとしての運用継続は困難になるため、再エネ電源自身が一次調整力を供出するなどの対策が必要となると考えられる。
なお2025年度向け容量市場メインオークション約定結果は表3のとおりであり、当面の間は、すべてのエリアにおいて、調整機能あり電源が一定量存在することが確認されている。
また二次調整力①についても、広域運用の開始は2026年度、広域調達の開始は2027年度が予定されていることから、当面の間はエリア内に調整機能を有する電源が一定程度存在していると考えられる。
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