迫るLPガス商慣行の是正に向けた省令改正、ガイドラインの内容も改定へ第9回「液化石油ガス流通WG」(1/4 ページ)

「無償貸与」や「貸付配管」といった商習慣が問題視されているLPガス業界。適正化に向け2024年7月に改正省令が施行される予定だが、その実効性を高めるため、資源エネルギー庁の「液化石油ガス流通ワーキンググループ(WG)」の第9回会合では「取引適正化ガイドライン」の改正案が示された。

» 2024年05月30日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 LPガス(液化石油ガス)は、可搬性に優れていること等により、家庭における主要なエネルギー源の一つとされている。近年、オール電化の普及等により、LPガス需要家数は減少傾向にあるものの、2022年3月末時点における家庭需要家数は2,173万件、世帯数の36%を賄っている。

図1.LPガス、都市ガス等の需要家数の割合 出典:液化石油ガス流通WG

 これまでLPガス業界では、いわゆる「無償貸与」や「貸付配管」といった商慣行が長らく続いており、それによりLPガスの消費者が不利益を被ることが問題視されてきた。

 「無償貸与」とは、LPガスの小売契約獲得を目的として、ガス器具や電気エアコン、インターフォン、Wi-Fi機器等のさまざまな設備をアパートオーナー等の不動産関係者に無料で提供することであったが、近年ではリベート(現金)の供与もこれに含まれる。それらの設備費用はアパート入居者がLPガス料金として支払うことになるため、LPガス料金が高額かつ不透明となっていた。賃貸集合住宅では、入居者は個別にLPガス事業者を選択(切り替え)できないため、「無償貸与」は事実上の「囲い込み」となる。

 また「貸付配管(無償配管)」とは、新築住宅内部のガス配管の初期費用をLPガス事業者が負担することである。当該住宅の入居者がLPガス事業者を切り替えようとする場合、配管費用の一括支払いが求められるため、結果としてLPガスの切り替えを思い留まらせる効果を持つ。これら「無償貸与」や「貸付配管」は、LPガス事業者自らの意思により行うケース、またはアパートオーナーや建設業者等の不動産関係者からの要求により行うケース、のいずれも存在する。

図2.賃貸集合住宅において問題となるLPガス商慣行の例 出典:液化石油ガス流通WG

 このような商慣行は、消費者によるLPガスの自由な選択を妨げるほか、LPガス事業者の疲弊も招いてきた。

 このため、国はLPガス小売の適正化に向けて、液化石油ガス法(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律)に係る経済産業省令を2024年4月に改正した。改正省令は2024年7月(一部は2025年4月)の施行が予定されている。

 また、改正省令の実効性を高めるため、資源エネルギー庁の「液化石油ガス流通ワーキンググループ(WG)」の第9回会合では「取引適正化ガイドライン」の改正案が示された。

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