建築分野の省エネ・再エネ活用を促進――省エネ法や建築基準法が改正法制度・規制(1/4 ページ)

建築分野における省エネ・再エネ利用の促進に向け、2022年6月に建築物省エネ法や建築基準法の改正が行われた。本稿ではその内容を紹介する。

» 2022年09月20日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、建築物分野における省エネ・再エネに関する取り組みが急務とされている。また日本の木材利用のうち45%が建築物分野であり、木材の利用を拡大することは、CO2の吸収源対策として有効である。

 第6次エネルギー基本計画においては、2050年に住宅・建築物のストック平均でZEH・ZEB水準の省エネルギー性能を確保すること、また2030年度以降に新築される住宅・建築物についてはZEH・ZEB水準の省エネルギー性能の確保を目標としている。

 このため国は、2022年6月に建築物省エネ法や建築基準法を改正し、建築物の省エネ性能の向上に向けた対策の強化や、建築物分野における木材利用促進に資する規制の合理化などを講じることとした。

 なお建築物省エネ法は、従来から法の目的を、建築物の「エネルギー消費性能の向上」としていたが、今般の改正により新たに「建築物への再生可能エネルギー利用設備の設置の促進」を法の目的に追加し、法の名称も「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」に改められた。略称は建築物省エネ法のままとする。

建築物省エネ法における「省エネ基準適合義務」の対象を拡大

 現在の建築物省エネ法では、中・大規模(300m2以上)の非住宅の新築・増改築(以下、新築等)を行う建築主に対して、省エネ基準への適合義務を課している。また中・大規模の住宅の新築等を行う建築主に対しては、所管行政庁への届出義務を課している。

 今般の法改正により(施行は2025年度)、基準「適合義務」の対象が小規模非住宅・全規模の住宅にも拡大された(ただし10m2以下の小規模建築物等は対象外)。

図1.省エネ基準適合義務の対象拡大 出所:国土交通省

 また建築主は「努力義務」として、住宅・非住宅いずれにおいても、小〜大規模すべてを対象として、建築物(新築・増築・改築)の省エネ性能の一層の向上を図ることが求められる。「一層の向上」とは、義務基準である省エネ基準を上回る省エネ性能の確保を意味するものである。

 ただし通常、建築主(住宅であれば一般消費者)は建築に関する専門的知識を持っていないため、専門家である建築士から建築主に対して情報提供を行うなどにより、建築主の省エネ意思決定を支援することが重要である。

 このため改正建築物省エネ法では、建築士の「努力義務」として、建築物のエネルギー消費性能や省エネ性能の向上策に関して、建築主に説明することを求めている。

分譲マンションを「住宅トップランナー制度」に追加

 家電製品等のトップランナー制度と同様に、住宅においてもその省エネ水準の向上を目的として、トップランナー制度が運用されている。国は一定規模の事業者に対して、目標年次と省エネ基準を超える基準(トップランナー基準)を定め、新たに供給する住宅について平均的に満たすことを努力義務として課している。

 従来の住宅トップランナー制度においては、建売戸建住宅、注文戸建住宅、賃貸アパートがその対象とされていたが、2023年度以降は「分譲マンション」を追加することとする。対象事業者は、1,000戸以上を供給する事業者とする予定である。

図2.住宅トップランナー制度の対象 出所:国土交通省
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