一般の消費者等が、より省エネ性能に優れた住宅等を選択し購入・賃借するためには、適切な情報を受け取る必要がある。
このため現行の建築物省エネ法では、建築物の販売・賃貸を行う事業者に対して、建築物のエネルギー消費性能の表示を行うことを「努力義務」として求めている。
例えば、「BELS/建築物省エネルギー性能表示制度」においては、基準一次エネルギー消費量からの削減率等が図で分かりやすく表示されている。
今後、消費者等による建築物省エネ性能への関心を一層高め、より省エネ性能が高い建築物が選ばれる市場環境を整備するため、建築物省エネ性能の表示制度を強化する。このため改正建築物省エネ法では、販売・賃貸が行われる全ての建築物を対象として、建築物の販売・賃貸を行う事業者による表示事項・表示方法等を、国土交通大臣が告示で定めることとする。
仮に販売・賃貸事業者が告示に従わない場合、国は事業者に対して勧告・公表・命令することが出来るとして、努力義務でありながらも、執行力を強化するよう改正された。
カーボンニュートラルの実現に向けては、建築物は省エネだけでなく、再エネの利用拡大を強化することが求められている。
他方、太陽光発電等の再エネの効率性は、地域の気象条件や立地条件に大きく影響されるため、全国一律の規制措置ではなく、地域の実情を踏まえることが出来る市町村が導入促進を図ることが効果的と考えられる。
このため改正建築物省エネ法では、新たに「建築物再生可能エネルギー利用促進区域制度」を創設し、市町村が再エネ設備の設置の促進を図ることが必要である区域について、促進計画を作成することができる、とした。
なお、ここで再エネ設備とは発電に限定されず、太陽熱や地中熱等の熱エネルギーの利用も含まれる。
再エネ促進区域は、当該市町村全体に限らず、一部の街区を設定することも可能とされる。促進計画では、設置を促進する再エネ設備の種類や、再エネ設備を設ける場合の建築基準法の特例適用要件に関する事項等が定められる。
再エネ促進区域では、建築主は建築物の新築・修繕等において再エネ設備を設置することが「努力義務」として求められる。また同時に建築士は建築主に対して、設置可能な再エネ設備等を書面で説明することが「努力義務」として求められる。
建築士はその書面において、
などを説明することが、国土交通省令で定められる。
また通常、「努力義務」だけでは必ずしも期待された効果が得られるとは限らない。このため再エネ促進区域では、再エネ設備の導入インセンティブとして、特例措置が講じられている。
通常、建築物は、「高さ制限」や「容積率制限」、「建蔽率制限」等の形態規制を順守する必要があるが、当該建築物がすでに高さ制限に近い場合などに、再エネ設備を導入しようとするとこれを超過するため、再エネ設備を導入出来ないことが起こり得る。
このため、改正建築物省エネ法では形態規制の特例許可制度を創設する。
高さ制限を超える場合でも、建築物本体の影から影を増やさないことや敷地外に影を落とさないこと等を確認した上で特定行政庁が許可することにより、再エネ設備の導入を可能とさせる。
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