「系統用蓄電池」の導入が急増する北海道、大量導入における新たな課題が顕在化蓄電・発電機器(2/4 ページ)

» 2022年09月21日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

北海道エリアの再エネ導入状況

 2022年2月時点、北海道エリアでは太陽光発電が214万kW、風力発電が58万kW、合計272万kW導入されており、今後も更なる拡大が見込まれている。

 北海道の年間最低需要は226.5万kW(2020年度)であり、これと比較すると再エネ導入量は111%に相当する。このため北海道エリアでは2022年度から、晴天の低負荷日において、再エネ電源の出力制御が開始された。

図2.北海道 変動再エネ電源導入量 出所:北海道電力ネットワーク

北海道エリアの系統用蓄電池導入状況

 北海道エリアでは2021年以降、系統用蓄電池の接続検討申込が増加しており、2022年7月末時点では61件・160万kWに上り、このうち一部はすでに接続契約申込に進んでいる。

 これは、北海道エリアの年間平均需要(約350万kW)の半分程度に迫る非常に大きな規模である。

 また北本連系設備60万kW、新北本連系設備30万kW、新々北本連系設備(2027年度末運開予定)30万kW、の合計120万kWをも上回る規模である。

 仮に現在の蓄電池単価で試算すると、蓄電池総費用は2,560億円に上る。なお申込件数・容量から仮に単純平均すると、蓄電池1件あたりの容量は約2.6万kWとなる。

 ただし、一事業者が同一の案件候補を複数の地点で接続検討申込している可能性は否定できないため、最終的に何万kWが導入されるかは不明である。

図3.北海道エリア系統用蓄電池 接続検討申込状況 出所:北海道電力ネットワーク

 これを接続系統のタイプ別に見たものが下記の表2である。

 基幹系変電所(187kV)の数を系統数として、29系統のうちファーム系統が6、ノンファーム系統が23となっており、系統用蓄電池の申込はファーム系統に集中していることが分かる。

 例えば風力発電の場合、発電所の立地選択は風況の良さが最優先されるのに対して、蓄電池では気象条件が問題とならず、立地の自由度が増すため、事業者はファーム系統への接続を優先していると考えられる。

 ファーム系統は逆潮流側に対して空容量があるため、通常の発電所であれば、系統増強工事は不要である。

表2.系統用蓄電池 系統別の申込 出所:北海道電力ネットワーク

 ところが蓄電池は充電による順潮流が発生するため、多数の接続検討申込を受けている系統では、187/66kV連絡用変圧器や66kV送電線等の容量が不足することが想定されている。

 このため北海道電力ネットワーク社では、一定の系統増強を計画しているものの、それでもすべての蓄電池を受け入れることが出来ず、系統増強後も運用容量が不足すると懸念されている。

図4.187/66kV連絡用変圧器の想定潮流 出所:北海道電力ネットワーク

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