「系統用蓄電池」の導入が急増する北海道、大量導入における新たな課題が顕在化蓄電・発電機器(3/4 ページ)

» 2022年09月21日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

順潮流側 空き容量不足の対策

 従来、一般需要の増加による順潮流側の空き容量不足が生じる際には、系統増強工事により対処してきた。ただし、系統増強には数年程度の長期間を要するため、その間、同じ系統への接続を希望する他の一般需要も接続が遅れることとなる。

 また、系統増強工事費用が「特定負担」となる場合、蓄電池事業者に多額の工事費負担金が発生する可能性がある。

 このため、迅速な系統接続および系統増強工事費用抑制の観点から、発電(逆潮)側のノンファーム型接続と同様の仕組みとして、系統混雑時の充電抑制を条件とすることで、充電(順潮)側においても早期に系統接続できる方策を検討することとした。

 なお、順潮流側の系統混雑が発生しやすい時間帯とは、需要が多くスポット価格も高い時間帯であると想定される。

 一般的に系統用蓄電池は、スポット価格が安いタイミングで充電を行い、価格が高いタイミングで放電すると想定されるため、系統混雑時の充電を制限することは、事業者の充放電行動にそれほど大きな影響を与えないと考えられている。

 当面、この充電抑制は緊急的な対応として、北海道の一部系統を対象とした試行的な取り組みとして実施される。系統用蓄電池の具体的な充電制限や、系統の増強規律、費用負担等の在り方については今後の検討課題とする。

充放電による裁定取引の機会

 マルチユースが想定される系統用蓄電池であるが、現在のJEPXスポット価格高騰を踏まえると、蓄電池の充放電ロスはあるものの、時間帯値差を利用した充放電による裁定取引が特に注目されていると考えられる。

 例えば2022年9月14日受渡分のJEPXスポット市場北海道エリアプライスは、晴天のため昼間は0.01円/kWhであった一方、夕方には64円となっている。

 蓄電池の導入量が少なく、充放電による裁定取引が少ない段階では、当該蓄電池事業者は大きな利益を上げられると考えられる。

 ただし今後、蓄電池の導入量が著しく増加した段階では、市場での売り入札量/買い入札量の平準化が進み、スポット価格も平準化が進むと予想される。

 これに関連して制度設計専門会合では、2022年8月のある日のJEPXスポット市場における価格帯別売り入札量および約定価格(システムプライス)を公開している。

図5.JEPXスポット市場における価格帯別売り入札量および約定価格 出所:制度設計専門会合

 これによると、売り入札量の大半が「送配電による値無し売り入札」、「グロスビディング:GB、間接オークションの0.01円以下」、「GB、間接オークション以外の0.01円以下」であることが分かる。

 昼間の充電による買い入札量の増加、点灯帯の放電による売り入札量の増加は、スポット価格の形成に一定の影響を与え得るため、裁定取引による収益は縮小方向となると考えられる。

 また大量の蓄電池導入による競争は、供給力や調整力からの期待収益の低下にもつながり得る。これは一部の蓄電池事業者の参入見直しの契機ともなり得るため、北海道エリアでの蓄電池導入量は不透明である。

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