運輸部門の脱炭素化へ――合成燃料「e-fuel」の普及に向けた課題と展望エネルギー管理(3/4 ページ)

» 2022年09月22日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

自動車部門における合成燃料の活用に向けた展望

 国内運輸部門のCO2排出量約2億トンのうち、自動車に由来する排出は約86%を占めている。日本自動車工業会は、2050年カーボンニュートラルを宣言しており、合成燃料をその達成手段の一つと位置付けている。

 先進国では乗用車の新車販売は、急速にEV化が進むことが予想されるが、大型車の電動化普及には時間が掛かることや、国内約8,200万台の既存車両の脱炭素化も求められること、世界的には内燃機関車両が新車販売の太宗を占めることから、合成燃料の開発・普及が期待されている。

 このため国内での燃料仕様の統一はもちろんのこと、自動車はグローバル商品であることから、世界的な燃料仕様の統一が期待されている。

 最大の課題は価格(化石燃料との価格差)であると考えられるが、合成燃料のコストダウンが進むまでの間の需要創造策等については、現時点示されていない。

船舶(国際海運・内航海運)の取り組み

 船舶(海運)のうち、日本国内のCO2排出量として算定されるのは内航海運のみであり、その年間CO2排出量1,025万トンは運輸部門の5%を占めている。内航海運は、国内貨物輸送(輸送量×輸送距離)の40%を担う重要な部門である。

 内航海運では、2030年度のCO2排出量を約17%削減(2013年度比)することを目標としている。

 これに対して、国際海運では国別のGHG削減ではなく、国際海事機関(IMO)により、国際的な削減策が検討されている。世界全体のCO2排出量335億トンのうち、国際海運は約2.1%を占めている。同じ船舶(海運)ではあるが、外航船・内航船では著しくその規模が異なる。

表1.日本の船舶の保有隻数・規模等 出所:日本内航海運組合総連合会

 国土交通省と日本船主協会では「2050年の国際海運カーボンニュートラル」への挑戦を表明しており、その実現に向けて外航船舶の燃料を重油から複数の脱炭素燃料への転換を計画している。

 日本商船隊(約2,200隻)全てのゼロエミッション船への転換には、2025年以降の25年間で20〜30兆円の建造投資が必要となる見込みである。

図6.外航船舶 燃料転換の模式図 出所:国土交通省

 外航船舶各社は、移行期における低炭素燃料としてLNG燃料船の導入を進めているが、これらは将来的に合成燃料(カーボンリサイクルメタン)への転用が可能としている。

 ただし船舶から排出されるCO2の取り扱いについては、IPCCガイドライン等による明確化が必要としている。

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