運輸部門の脱炭素化へ――合成燃料「e-fuel」の普及に向けた課題と展望エネルギー管理(2/4 ページ)

» 2022年09月22日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

課題となるコスト、現時点での試算価格は?

 合成燃料は、その原料となる水素やCO2をどこでどのように製造・調達するかにより、製品コストが大きく変わるが、現時点の試算では約300円〜700円/lと高額であることが課題である。

図4.合成燃料の製造コスト試算 出所:合成燃料導入促進官民協議会

 革新的な製造方法の技術開発により、製造効率の向上は目指すものの、合成燃料製造コストの大半は、グリーン水素の調達費用が占めている。

 再エネ電力価格20円/kWhで水電解する場合、水素コストは634円/lとなるが、再エネ電力価格1〜2 円/kWh+輸送コストと仮定するならば、水素:127円/l、CO2:32円/l、製造:33円/l、の合計により、200円/lという国の合成燃料目標価格を達成することが可能と試算されている。

 合成燃料の製造には、このように安価で大量の再エネ電力を必要とするため、国内だけでなく、合成燃料を海外で製造し、日本に輸入するサプライチェーンの形成が検討されている。

革新的な製造技術の開発に注力

 現在、グリーンイノベーション(GI)基金では、既存製造技術の高効率化開発を進めており、2025年に1バレル/日規模、2028年に300バレル/日(1.7万kl/年)のパイロットプラントの建設および運転検証を行う予定としており、2040年までには1万バレル/日規模のプラント(約50万kl/年)にて自立商用化することを目指している。

 またNEDOでは、合成ガス(CO+水素)を経由しない「CO2からの直接FT合成」技術の開発や、FT合成の反応熱を合成ガス製造に利用する等の一貫製造プロセスの技術開発を進めている。

図5.国の合成燃料推進目標 出所:合成燃料導入促進官民協議会

 以下では、合成燃料の用途別や輸送モード別(自動車・船舶海運・航空)に、合成燃料の使用等による脱炭素化の取り組みを報告する。

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