企業の自主的な「排出量取引」を実証――本格始動が近づく「GXリーグ」とは?エネルギー管理(3/4 ページ)

» 2022年09月26日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

GX-ETSの取引ルールの詳細

 GX-ETSの取引ルール等の規定類は現在、GXリーグ検討会にて検討中であるが、制度概要は以下のとおりである。

 カーボンプライシングの中で、炭素税は炭素価格が決まるものの、削減量の保証は無いのに対して、義務的ETSでは炭素価格は変動するものの、制度対象全体の削減量(排出量:キャップ)が担保されるという特徴がある。EU-ETSはキャップ&トレード方式の代表例である。

 GX-ETSは義務的制度ではなく、あくまで企業の自主的な参画に基づくものであり、自ら野心的な削減目標を設定することが推奨されることから、「プレッジ&レビュー」方式のETSであると言える。この場合、「量の担保」というETSのメリットは減じられていると言える。

 GXリーグ参画社は削減目標とその実績を公開することが求められるため、金融機関や投資家等が比較可能なように、各社の情報をデータベース化した「GXダッシュボード」が構築・公開される予定である。

図3.GXダッシュボードのイメージ 出所:GXリーグ設立準備事務局

 EU-ETSでは、事業者は自由に余剰アローワンスを売買可能であるのに対して、GX-ETSでは、2030年度削減目標を46%以上に設定したうえで、その目標を超過達成した場合のみ「超過削減枠」として売却可能となる。

 削減目標に未達成となったGX-ETS参画社は、他社の「超過削減枠」もしくはオフセットクレジットを目標達成に用いることが可能となる。

 GX-ETSでは現時点、J-クレジットとJCM(二国間クレジット)のみが適格オフセットクレジットとして指定されている。いずれのクレジットもいわゆる「ベースライン&クレジット」方式のクレジットである。

 なお現時点、いずれのクレジットも発行量・取引量はわずかであるが、国は2030年度までにJ-クレジットで1,500万トン、JCMで1億トンの発行を目標としている。

 超過削減枠やJ-クレジット等のクレジットは、東京証券取引所に新たに設けられた「カーボン・クレジット市場」において取引される。

 従来、クレジットの売買は相対取引が主であり、流動性の低さと価格公示がされない点が課題とされてきた。このため2022年度の実証では、カーボン・クレジット市場にて取引所取引を行うことにより、価格を公示することとした。炭素価格が明示されることは、GXリーグ参画社の予見性を高めると期待される。

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