企業の自主的な「排出量取引」を実証――本格始動が近づく「GXリーグ」とは?エネルギー管理(1/4 ページ)

国と企業が共同で「グリーントランスフォーメーション(GX)」の実現に向けた取り組みを推進する「GXリーグ」がいよいよ始動。企業間の排出権取引制度の実証など、新たな取り組みの実証が予定されている。その概要と今後の展望をまとめた。

» 2022年09月26日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 カーボンニュートラルの実現に向けては、経済社会システム全体の変革、すなわち「グリーントランスフォーメーション(GX)」が必要と考えられている。

 このため経済産業省は、産・官・学・金融等のすべての分野のプレイヤーとともにGX に向けた挑戦を行う場として「GXリーグ」を設立する基本構想を2022年2月に公表した。

 現在、このGXリーグ基本構想へ賛同意思を表明した企業数は440社に上る。

GXリーグとは何か?

 GXリーグが何を行う場であるかを理解するには、まずそのスケジュールを知ることが有益であろう。GXリーグの本格稼働は2023年度を予定しており、2022年度はその準備期間と位置付けられている。

図1.GXリーグの設立にむけた準備スケジュール 出所:経済産業省

 本格稼働開始以降、参画企業にとって最も重要な取り組みとなるのが、自社および社会全体の温室効果ガス(GHG)排出削減の取り組みであり、これを支える仕組みが「自主的な排出量取引制度」およびカーボン・クレジット市場である。

 なおここで用語定義として、「参画」とは2023年度以降に本格稼働するGXリーグに参画すること、「賛同」はGXリーグ基本構想に賛同することであり、賛同したからといって実証参加や参画が必須になるわけではない。

 なお、GXリーグの中核的コンセプトは「リーダーシップ」とされている。

これまで日本では、国が制度設計・ルール策定を行い、民間企業がそれに従うという受け身的姿勢であったことを反省材料として、RE100やTCFD等のように欧米諸国で見られる民間企業イニシアティブによる制度設計手法に転換することも、GXリーグの大きな目的としている。

2022年度の「準備期間」におけるトピック

 2022年度の「準備期間」のキーコンテンツの1つとして、2050年カーボンニュートラルの持続可能な未来像を議論・創造する「未来社会像対話の場」が設けられている。

 ここでは賛同企業による定期的なワークショップにより、将来のビジネス機会創出のための未来像の策定・共有が行われるほか、「GX企業としてのリーダーシップ(行動指針)」の素案も作成される予定である。

 また準備期間には、「市場創造のためのルール形成の場」が設けられる。

 GXリーグ賛同企業と経済産業省の共同でワーキンググループを設置し、表1のようなテーマで議論を行い、やがては国内制度化、さらには世界に向けてGXリーグ発のルールの発信を行うことを想定している。

表1.市場創造のためのルール形成の場:テーマ(例) 出所:GXリーグ設立準備事務局

 これら2つの「場」はGXリーグでなければ実施できないわけではないが、官民の「共創」の場として、準備期間終了後も継続的な活動、内容の更新が進むことが期待される。

 また2022年度準備期間の第三の取組事項として、自主的な排出量取引の実施に向けたルールメイキングおよびその排出量取引の実証事業への参画がある。

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