再エネ大量導入の時代、電力系統の混雑を考慮した「調整力」の確保をどうすべきか?エネルギー管理(1/4 ページ)

新たな電源の早期接続を認める「ノンファーム型接続」が始まることで、今後エリア内でも電力系統の混雑の発生予想される。政府はこうした系統混雑を考慮した調整力確保の考え方について、議論を開始した。

» 2022年10月07日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 従来日本では、エリア内で系統混雑が発生しないように設備形成することにより、「ファーム型接続」が保証されてきた。

 しかし2021年度以降、送電線への早期接続を認める「ノンファーム型接続」の適用開始により、エリア内でも系統混雑の発生が許容されることとなる。

 これまで系統混雑は、主に電力量取引・kWh価値の課題として捉えられてきたが、今後の系統混雑増加に従い、kW価値(供給力)・ΔkW価値(調整力)に対しても影響を与えると想定されている。

 このため、電力広域的運営推進機関の「需給調整市場検討小委員会」において、海外での事例紹介と共に、系統混雑を考慮した調整力確保の考え方について議論が開始された。

系統混雑の段階的増加

 従来、エリア内(地内)では系統混雑は発生しないものの、地域間連系線の設備容量等の制約により、エリア間では従来から混雑が生じている(図1のフェーズ0)。

図1.系統混雑の段階的増加 出所:需給調整市場検討小委員会

 沖縄エリアを除く9つのエリアがそれぞれ「ゾーン」に対応するものであり、ゾーン制のもと、電力量・kWh価値が取引されるJEPXスポット市場では、市場分断が発生することにより混雑処理が行われてきた。混雑エリア・ゾーン(送電側のエリア)では不落となった電源が起動運転されず、非混雑エリア(受電側のエリア)では、より限界費用の高い電源が起動運転されることにより、市場間値差が発生すると共に、地域間連系線の潮流は一定量以下に保たれることとなる。

 今後、ノンファーム型接続の適用による再エネ電源の増加により、当初は特定の少数の地点のみで地内系統混雑が発生すると想定される(フェーズ1)。

 現在(2018年6月以降)、電源の系統接続費用は大半が「一般負担(shallow方式)」となっており(4.1万円/kWを超える部分のみ特定負担・発電事業者負担)、発電事業者が混雑系統を回避するインセンティブが相対的に小さいため、次第に不特定多数の場所で混雑が発生する(フェーズ2)と想定されている。

 現在すでに、kWh価値(電力量)市場は全国で1つ(9ゾーン)となっているが、2024年度以降は、容量市場や需給調整市場の全面開始に伴い、kW価値(供給力)やΔkW価値(調整力)についても、全国1市場化される予定である。

表1.電力価値のエリア間市場統合 出所:需給調整市場検討小委員会

 今後の地内系統混雑の発生に伴い、地内混雑処理を行うことが求められるが、供給力や調整力をどのように確保するかが課題とされる。

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