今後の省エネ政策はどう在るべきか――国内外の省エネの現状と対策法制度・規制(2/4 ページ)

» 2022年11月17日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

国内中小企業の省エネ取り組み状況

 省エネノウハウや人材に恵まれた大企業では省エネが進んでいることと比べ、多くの中小企業では省エネの取り組みが遅れていたことが課題として指摘されている。

 省エネセンターが行う中小企業に対する省エネ診断によると、経済的に合理的な取り組みであることを前提として、産業部門では10%前後程度、業務部門では10〜20%以上の省エネ余地があると推定されている。

 現在、エネルギーコスト上昇等を背景として、中小企業の省エネへの取り組み意欲が向上しており、今年度は省エネ診断事業への申込件数が例年の約3倍のスピードで急増している。

図4.直近3年間の省エネ診断申込件数の推移 出所:省エネルギー小委員会

 このため現在、省エネ診断を実施する専門員の不足が発生しているが、今後は「総合経済対策」の一環として、省エネ診断実施団体・企業を増加し、省エネ診断人材を倍増させる計画としている。

 また現在、中小企業に対する「ものづくり補助金」の「グリーン枠」において、温室効果ガス(GHG)の排出削減に資する製品等に対して3分の2の補助を行っているが、今後、補助上限額や要件見直しなど行い、さらに使いやすい制度とする予定である。

 中小企業の省エネを進める上で、取引先(大企業)からの働きかけは効果的であり、一部の大手電機・自動車メーカーが取引先への省エネ診断を実施する事例も出てきている。

 現在、企業が発注者の立場で自社の取引方針を宣言する「パートナーシップ構築宣言」の仕組みがあるが、今後は、大企業による取引先中小企業に対する省エネ対策支援を促進することが期待されている。

家庭における省エネの支援策は?

 先ほど紹介した図3の英国の事例のように、家庭部門では住宅の冷暖房や給湯などにおいて、その住宅省エネ性能の良し悪しが大きな影響を与える。

 住宅の省エネに関しては、従来、経産省・国交省・環境省がそれぞれで住宅リフォーム関連の予算事業を実施してきたが、今後は3省庁連携によるワンストップ対応を行う予定としている。

図5.住宅省エネリフォームのワンストップ化 出所:省エネルギー小委員会

 また一般的に、家庭(一般消費者)は必ずしも十分な省エネ知識を持っていないことから、消費者接点を持つ事業者からの省エネ情報提供が有効と考えられている。

 このため、2022年度から「省エネコミュニケーション・ランキング制度」を開始し、エネルギー小売事業者(電力・都市ガス・LPガス)による、一般消費者向けの情報提供や省エネサービスの提供を促すこととされた。

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