小規模な再エネ電源やEVなど、いわゆる「分散型リソース(DER)」の電力系統への接続が加速するなか、DERをうまく活用した電力システム運用方法が求められ始めている。そこで政府では「次世代の分散型電力システムに関する検討会」を新たに設置し、DERの活用による電力システムの効率化・強靭化に向けた検討を開始した。
従来、電力システムは大規模電源を中心として上位系統から下位系統に電力が流れるものであったが、近年の小規模再エネ電源等の増加に伴い、下位系統から上位系統への潮流が増えつつある。
今後の電力システムはさまざまな分散型リソース(DER:distributed energy resource)を活用することにより、脱炭素化と安定供給、コスト抑制の同時達成が期待されている。
このため資源エネルギー庁は「次世代の分散型電力システムに関する検討会」を新たに設置し、DERの活用による電力システムの効率化・強靭化に向けた検討を開始した。
一般的にDERとは、太陽光等の小規模分散電源のほか、需要家設置蓄電池、EV、デマンドレスポンス(DR)等を意味するが、検討会では特にEVやDR等の低圧リソースが主な検討対象とされており、DERの価値発掘とその評価、分散型システム構築に向けた検討を行う予定としている。
DERの一つであるデマンドレスポンス(DR)は、国内では現在、2022年度調整力公募(電源I')における落札量は230万kW、2025年度向け容量市場オークションにおける落札量は475万kW(発動指令電源。DRはこの内数)と、一定の存在感を持つ規模となっている。
欧米諸国の政府やTSO・DSO(送配電事業者)は、DERの活用に向けたロードマップを策定しており、例えば英国では、年次ごと・領域ごとにマイルストーンやアクションを設定している。英国National Grid ESOは、「需要家」領域において2030年までのアクションとして、需要家によるフレキシビリティ(柔軟性)の提供や新ビジネスモデルのインセンティブ付けとなる市場改革を行う予定としている。
また日本でも送配電網協議会が次世代型電力ネットワークの一部として、DERも包含するロードマップを策定・公表している。
なお改正省エネ法では、従来型の「減らす」省エネだけでなく、特定事業者に対して「電気の需要最適化」、つまりDRの取り組みに関する定期報告を義務化している。
このため、「DR実績」の具体的評価方法や、この評価に必要となるベースラインの考え方等について、本検討会で整理する予定である。
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