配電系統に接続された再エネ電源の出力が配電用変電所設備容量を超過する場合、再エネの出力抑制もしくは配電設備の増強投資が必要となる。
このような場合に、「上げDR」として需要家設置蓄電池やEV等で需要を創出するならば、再エネ抑制や増強投資を回避(もしくは繰り延べ)することが可能となる。
海外事例として英国の電力小売事業者Octopus Energy社は、市場連動型料金プランのほか、同社がEV充電時間の制御を行える料金プランを提供している。
またオランダでは、EV充電サービス事業者Jedlix社等が、EV充電の制御による二次調整力(aFRR)の供出を開始し、DERが調整力リソースの一つとして活用されている。
また日本ではエナリス社やREXEV社が、EVを電源I'のリソースとして活用している。しかしながら現在は、車両/充電器ごとに制御方法が異なるため、事業者がEVをDRリソースとして制御するためにはインフラへのデバイス追加設置・追加投資が必要であることが課題とされている。
このため早期にすべての車両メーカー、充電器メーカーの仕様統一が要望されている。
現在すでに国内では、蓄電池等の分散型リソースは需給調整市場に参加可能であるが、「1需要場所1計量」が原則であることから、DRの効果(制御量)は「受電点」での計量値によって評価されている。
一般的にDERの多くは小規模であるが、需要家内の個別機器をDERと捉える場合、さらに小さなリソースとなる。
この場合、個別リソースをDR制御したとしても、需要家全体(受電点)の需要変動に飲み込まれてしまい(埋没してしまい)、DR効果が評価されないことが課題とされている。
現時点、海外でも機器個別計測の事例はごく限定的であるが、米国カリフォルニア州の独立系統運用者CAISOでは、蓄電池やEVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)の機器点計測による市場参加(卸市場・需給調整市場)を認める制度が導入されている。
また国内では、機器個別計測に類似する仕組みとして、2022年4月から特定計量制度が導入されている。これにより一定の条件を満たす場合には、家庭太陽光発電のPCSによる計量や、EV充放電設備による計量等が認められている。
需給調整市場における機器個別計測の活用については、さまざまな技術的・制度的課題があるため、今後、本検討会において検討が進められる予定である。
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