費用便益評価(B/C)において、費用の想定は明確であるのに対して、便益を常に正確に金銭的に評価できるとは限らないため、何を便益として、どのように評価するかは難題である。
広域機関では、燃料費やCO2対策費用、アデカシー(供給力の充分性)、送電ロスを貨幣価値指標として考慮し、系統の安定性や再エネ出力制御率、CO2排出量を非貨幣価値指標として考慮することとした。
なお費用と便益のいずれも、あくまで「系統増強前(Without)」と「系統増強後(With)」の差の部分のみを評価しており、再エネ電源そのものの部分では違いが生じないことに留意願いたい。
なお再エネ大量導入に伴い、調整力や慣性力の必要量も増加すると想定される。しかしながら、「系統増強前(Without)」と「系統増強後(With)」の差を把握するには、調整力の調達方法等に関して技術面や制度面でのさまざまな検討が必要であり、現時点では貨幣価値として合理的に算出することが困難である。
このため今回は、これらの費用は系統増強の費用便益項目には織り込まず、外数としてその総額を示すこととしている。
東地域においては、北海道・東北で風力発電を中心とした大量の再エネ導入が想定されており、その再エネ電力を大消費地である東京エリアへ送るためには、大規模な系統増強が必要となる。
このため広域機関では、長距離大容量かつ海底ケーブル送電に優位性のあるHVDC(高圧直流送電)技術を用いることを提案している。
基本シナリオにおけるHVDC構成は、各エリアの再エネポテンシャルや事故停止リスクに対するレジリエンスを考慮して、日本海側と太平洋側で送電設備容量を分散して配置することとした。
費用便益評価や再エネ出力制御率の試算に基づき、HDVC容量は北海道〜東北間600万kW、東北〜東京間800万kWとする。(1GW=100万kW)
このHDVCコストは約2.5〜3.4兆円と試算されている。東地域ではこの他に、北海道地内対策コストで約1.1兆円、東北東京間連系線対策コストで約2,000億円などの系統増強工事が必要となり、東地域の合計総額としては約5.1兆円〜6.1兆円に上ると試算されている。
東地域の費用便益評価内訳は表3のとおりである。HDVC等の系統増強は、それ単独では費用便益評価できず、広域エリアで一体的に費用便益評価すべきものと考えられている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.