九州エリアの太陽光発電等の再エネ電力を大消費地である関西エリアへ送電するためには、関門連系線(中国九州間)の系統増強が必要となる。費用便益評価や出力制御率のシミュレーション結果から、増強規模は280万kWを目安とする。
中西地域ではこの他に、中地域増強で約520億円、九州地内増強で約100億円などの系統増強工事が必要となり、中西地域の合計総額としては約4,800億円に上ると試算されている。
東日本の周波数は50Hz、西日本の周波数は60Hzと異なるため、東西間で電力を送電するには、東京中部間連系設備(周波数変換設備:FC)を経由する必要がある。
現在、このFC設備容量は210万kWであるが、2027年度末には90万kWが追加され、合計300万kWとなる予定である。
上述の東地域と中西地域の増強系統をすべて実施したうえで、FC容量のさらなる増強シミュレーションを実施したところ、再エネ電力の融通効果により、+270万kW(合計570万kW)程度まで、マスタープラン全体でB/C>1となることが確認された。
なお、東日本大震災のような大規模災害等が発生した際には、電源が脱落している被災エリアに向けてFCを介して電力を融通し、被災エリアの需給バランスを保つことも期待されるが、この便益に関しては費用便益評価の中では考慮(算定)されていない。FCの+270万kW増強費用は、約4,000〜4,300億円と試算されている。
FCの増強に関しても、これ単独では費用便益評価できず、東地域と中西地域の増強系統をすべて実施することを前提として、全国大で費用便益評価されている。
よって表6の工事費(約6兆円〜7兆円)は、FC増強を含めた全国の系統増強費用の合計(マスタープランの合計)費用を表している。
これは基本シナリオの費用であるため、需給立地を最適化するシナリオでは系統増強費用をさらに抑制することが期待される。
ここまで各地域の主要な系統増強工事を述べてきたが、基本シナリオ(需給立地誘導ケース)における全国の地域間連系線および地内系統増強の全体像は図5の通りである。この増強コストには、地域間連系線および上位2電圧の地内基幹系統の増強コストのみが計上されている。
念のため繰り返すと、マスタープランは長期方針としてさまざまな可能性を示すものであり、具体的な工事内容やその費用については、整備計画の中であらためて詳細に検討されることとなる。
広域機関では今後、基本シナリオ以外の複数シナリオや、感度分析を行う予定である。感度分析では、「年間需要」、「再エネ導入量」、「火力設備容量」、「原子力設備利用率」、「太陽光の立地」、「風力の立地」、「系統用蓄電池導入量」、「水素・アンモニア導入量」をそれぞれ独立に増減させてシミュレーションを行い、要因ごとの系統増強への影響(B/C等への影響)を確認する予定である。
マスタープランは2023年1月に素案を作成公表後、パブコメが実施され、2022年度末の策定公表が予定されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.